冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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42. ーーはまだ続いている

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「マイグレックヒェン公爵令嬢、おそれながら進言させていただきますと、心配なさることはないと思いますよ。」

 グレーアッシュの髪に、グレーの瞳を持つ厳格そうな雰囲気のダンディなおじさまが唐突に話しかけてきた。先程まではこの部屋にいなかったことから、マイグレックヒェンに従っている派閥の人間なのだろう。

「………あなたは誰かしら……?」
「おや?…いやはや失礼いたしました。姫の勇姿に見惚れて名乗るのをすっかり忘れてしまっておりました。お初お目にかかります、マイグレックヒェン公爵令嬢。私の名前はブラッド・ランドルフと申します。」
「……わたしの名前はレティシアよ。レティシア・マイグレックヒェン。よろしくね、ランドルフ侯爵。」

 わたしはジェフリーの傷口にぎゅっと力を入れてハンカチを押し当てて、甲斐甲斐しく止血という名の手当てしながら返した。
 わたしがジェフリーの世話を焼くのは、ジェフリーがわたしにとって大切な存在であるということが、先程の行動で周知の事実になってしまったからだ。そして、ここは下手に隠そうとするのはかえって危険だという判断も下したからだ。

「……手慣れていらっしゃいますね。」
「……わたしはジェフリーに怪我はするなと命じるのに、いつもいつも怪我をして帰ってくるからよ。必要に駆られただけかしら。」
「申し訳ございません。」

 ジェフリーは嬉しそうでいて、同時に困ったように微笑んだ。
 これは絶対に反省していないだろう。
 いずれお灸に据えることが必要そうだ。
 ひとまず、今は無視されることが一番辛いだろうから、無視する事にする。

「ふぉっふぉっふぉー、おふたりともまだまだお若いことで。」
「………?
 何を当たり前の事を言っているのかしら。わたしたちはまだ8歳よ。」
「いやはや、先程の大胆な書類の複製をばら撒くという行動は大の大人でも難しいですし、何より、殺気の中で堂々としていることは、歴戦の剣士でも難しいでしょうからな。私達は貴方様方の見た目ではなく、精神年齢が分からなくなってしまっているのですよ。」

 探るような気配の僅かに混ざった視線に、ようやくここで探りを入れられている事にきがついた。

 お兄さま方からの試験はまだ続いている……!!

「………普通の子供よりは優れていたとしても、異能者である普通の公爵家の人間には勝てないわ。」

 だからこそ、わたしは悲しそうに微笑んで自分が無力な人間だとアピールした。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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