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37. 死への足音

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「……必死になって書類を集めているところ悪いのでけれど、その書類は複製よ。」

 唖然とした視線が、歓声をかき分けるように声を張り上げたわたしに注がれた。

「原本である書類におきましては、今現在私が、私達が信を置いている者のところに預けてあります。」
「……あなたたちには、わたしが大事な大事な書類の原本を、何も考えずにばら撒く、愚か者に見えているのかしら?」

 わたしの微笑みと歌うように紡いだ嘲笑う言葉に、絶叫のような悲鳴があがり、何人ものがたいの良い男が、理性を失ったかのように殴りかかりに突進して来た。だが、ことごとくジェフリーの華麗でお見事!!としか言いようのないような綺麗な技によって鎮圧されていった。みんな見事に例外なく伸びている。

「……言ったでしょう?ジェフリーはガルシア侯爵家の子息だって。あなたたちに太刀打ちできるような人間ではないと。ここまで聞けば、彼もその血を色濃く受け継いでいる鬼才だって普通の思考回路ならばは考えないかしら……。」

 わたしは口外に愚か者に伝えていたことを、あえてここで大きな声で口にした。

「伸びている者に、否、愚か者に問うても無駄だと思います。」
「……そうね。」

 わたしはクスクスと笑いながら、くるりとターンして、顎に人差し指を当てて小首を傾げた。

「……お外でお待ちの皆々様?そろそろ入場してきてはいかがでしょうか。
 これだけの証拠が存在すれば、ブラウン子爵家の人間以外は全員処分することが可能なのですよ?」

 敬語を使って僅かにかしこまりながら、書類をばら撒く前にジェフリーが到着を知らせてくれた、わたしを生け贄にした人間たちに言い放った。

「………掃除をしてから私にマイグレックヒェンを手渡すのではなかったのか?」

 金縛りに遭い、震えが止まらないくらいに苦しくて怖い、本能が警鐘をけたたましく鳴らす程の殺気を纏った男が、扉を足で蹴り上げて入室してきた。

「……そういう予定だったのですが、ここに入室した際にあなたさまもお掃除に参加したいのではないかと思ったので、お呼びさせていただきました。」
「………そうか、……人の感情を勝手に憶測する人間は必要ない。さっさと死んでもらおうか。」

 僅かに怯えの含んだわたしの声に、冷酷で冷え切っていて、殺気の籠った声が返された。
 どうやらわたしは、どこかで選択を間違えてしまったらしい。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

やっと、やっとの登場です!!
次回からの大暴走を書くのが楽しみで仕方がありません!!

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