冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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32. わたしの新しい先生

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「わたくしから本格的な医学を学ばないかしら!!」
「…はぃ?」
「まぁ!本当!?貴方様のような教え子を持てるなんて、わたくしとっても嬉しいですわ!!」

 ショートしてしまったわたしの頭に夫人の元気の良すぎる甲高い声が響き渡った。

「………おしえご……?」
「えぇ、教え子です!!」

 無意識のうちに反芻した言葉に夫人が激しく首を縦に振った。

「……推しエゴ……?」
「教え子です!!」

 推しエゴってなんでしょうか?

「……推しえご……?」
「教え子ですわ!!」

 推しえごって言葉は存在しないはずよね……?
 じゃあ、……。

「……教えご……?」
「惜しいですわ!教え子です!!」

 教えごってもしかしなくても……。

「……教え子……かしら……?」
「そうです、貴方様はわたくしの教え子ですわ!!」

 あなたさまってどなたのことでしょうか……?

「……えーっと……誰が……?」
「貴方様ですわ!!」

 それでは分からないのだけれど……。

「……あなたさま?……
 ーージェフリーのことかしら?」
「違いますわ!!」
「是非是非教えを乞いたいですが、残念ながら違います。」

 夫人の悲鳴のような叫び声とともに、ジェフリーがブンブンと首を横に振った。

「え!?違うの?」
「えぇ!違いますわ!わたくしの教え子はマイグレックヒェン公爵令嬢、貴方様ですわ!!」
「………。」

 これはどうするべきなのでしょうか……?
 わたしは子爵に嫌われて排除の機会を得ようとしていたのにも関わらず、なぜか破天荒な夫人の教え子になってしまったようだ。

『是非是非教えを乞いたいですが、残念ながら違います。』

「ーー……。……ジェフリーはどうしたい?」
「…私は習いたいのですが……。」
「……夫人、ジェフリーも共に教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「構わないですわよ!!わたくし、可愛い教え子が欲しかったんです!!ガルシア侯爵令息もぴったり条件に当てはまりますわ!!」

 わたしは1つの条件を提示しました。

「……では、ブラウン子爵夫人、これからよろしくお願いいたします。」
「!? 私もよろしくお願いいたします。」

 わたしとジェフリーは深々とお辞儀をしました。

 ジェフリー、
 医学を習うのは決してわたしが習ってみたいからではないんだからね。
 ジェフリーがやりたいことを我慢しなくていいようにわたしが気を使っただけなんだから……。

「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ、マイグレックヒェン公爵令嬢!!」
「レティシア、レティシアとお呼びください、……先生。」
「私のことはどうぞジェフリーと。」
「分かりましたわ!レティシア様!ジェフリー様!」
「「………。」」

 わたしたちは果たしてこのテンションマックスな先生について行くことができるのでしょうか……?

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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