冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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31. 夫人の地雷とは……

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「マイグレックヒェン公爵令嬢、先程の御無礼お許しください。まさか令嬢自ら息子の応急手当てをしてくださっていたとは思っておりませんでした。」
「わたくしからはお礼を申し上げます。テオドールの手当てをしてくださりありがとうございます。あの、わたくしは医学に造詣があるのですが、令嬢の処置は医者のわたくしから見ても見たところ完璧ですよ。」

 子爵は深々と頭を下げた。わたしは当然の事をしただけなのに……。
 ……夫人は医学に造詣があったなんて知らなかった。ここにいる全員のできることを全てを知っているつもりだったけれど、微々たる情報だけでは知らないこともやっぱり存在するのね。
 でも、これは褒めすぎね。釘を刺した方がいいかしら。

「……子爵、謝罪を受け取るわ。夫人については、お礼は受け取るけれど、お世辞は結構よ。」
「お世辞ではないのですが……。」

 夫人は困ったように笑った。

「お嬢様は何をしても完璧なのですよ。ですが、いつもいつも謙遜が過ぎるのですよ……。夫人ももっともっとお嬢様に言ってやってください。」

 何故かジェフリーが得意げで嬉しそうに言った。
 わたしが許可を出したわけでないにも関わらず、勝手にしゃべった挙句、ないことを吹き込んだのだから、後からお話が必要ね。お葬式が終わったらお話しするのが大変ね……。

「……ジェフリー、後から覚えておきなさい。
 夫人、ジェフリーの言ったことは気にしないで放っておいてちょうだい。ただのお嬢様馬鹿の戯言たわごとよ。手に取るにも足りないかしら。」
「そのような、絶対に、そのようなことはございません!!マイグレックヒェン公爵令嬢の手当ては完璧でしたわ!!テオは打撲だけでしたが、その患部の僅かな手当てを見ただけでも令嬢の几帳面さが現れていましたわ!!美しい包帯の巻き方、患部が動かないようにと気のつかわれたきっちりとした固定、あぁ、なんと素晴らしいのでしょう……!!」

 ……どうやらわたしは、先程のほんの僅かな会話で夫人のおしゃべりスイッチという名の地雷を見事に踏み抜いてしまったようだ。
 夫人はわたしに目線を合わせるように屈んでから、手を取ってキラキラと輝いた瞳をわたしに向けて頬を蒸気させながらうっとりした顔付きでペラペラと話し始めた。

 ーーーそ、そんなことよりも、こ、ここ、これはどうしましょう!?…て、てて、て、手が、手が……ふぇ、あわわわ……うぅ…、……!?

「令嬢!!」
「……は、はぃ……。」

 頭の中が残念なことになってしまっているので、お返事がはっきりしていないのはご愛嬌だ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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