冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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28. わたしの思いつき

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『ありがとう。でも、そんなに褒めちぎってもあめ玉しか出てこないよ?』

 困り果てていると、頭の中に先程のジェフリーの言葉が色鮮やかに蘇った。

「! ……ねぇジェフリー、まだあめ玉持ってる?」

 わたしは唐突に思いついた作戦を実行する為に、ジェフリーに聞いた。

「? 持っていますが……?」

 ジェフリーはガサゴソとポケットを漁りながら返した。

「……何個?」
「残り9個です。」

 どうやってそんなに沢山のあめ玉を、小さなポケットに入れているのかが気になったが、わたしは作戦の決行が可能なことに安堵を覚えて、ニヤリと笑った。

「…子供たちに配ってあげて。」
「!!」

 やっとわたしのやろうとしていることを理解したらしいジェフリーは、晴天の霹靂と言わんばかりに驚いた後、こくりと頷いた。

「お兄ちゃんあめ玉持ってるんだけれど、食べたい味はあるかなぁ?」

 ジェフリーの笑いながら言った一言に、わたしは味を選べるくらいに種類があるのかと小首を傾げた。それに、子供たちの欲しい味を持っているとは限らないはずだ。

「うぅー、いちご。」

 ずっと泣いているけれど、比較的しっかりとしているリスさんみたいに可愛らしい女の子が答えた。

「ひっく、ぼくはみかん。」

 しゃくりあげているくすんだ金髪の男の子は上目遣いでお願いするかのように言った。

「ままとぱぱのは?」

 全体的に焦茶色の可愛らしい男の子はよほどのママとパパが大切らしい。
 年齢の割にお行儀もよく、教育も行き届いているのが手にとるように分かる。……彼はそれだけ大切に大切に愛されているのだろう。
 
 ……わたしのやろうとしていることは彼らの両親を殺すことのようなものなのだ。
 彼ら笑ってもらったり、に笑いかけたりする資格なんてもの、最初から存在していなかったのだ。

「お嬢様、お嬢様が心配する必要はございません。彼の両親は何にも関与していなく、潔白だったはずです。」

 ジェフリーに困ったように言われて、やっとのことで思い出した。
 反マイグレックヒェンに近い中立派の中に、唯一潔白すぎるほどに潔白な家があったことを。

「……今ご両親は?」
「子供の名前をこの子の名を呼んで必死に探しています。」
「そう、……連れてきて差し上げて。」
「承知いたしました。」

 ジェフリーはまたもや音もなく消えた。
 次に出てくる時には、彼のご両親も一緒だろう。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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