12 / 117
11. わたしは生け贄
しおりを挟む
「……お嬢様、残念ながらそろそろお時間です。」
「…………分かったわ。いきましょう。」
ジェフリーはわたしの感情を知ってか知らずか、ここを離れるように促した。
「……お兄さまは?」
「…まだいらっしゃっていないようです。」
「……そう。」
ジェフリーが言うのならば間違いないだろう。
……ここにいる人は、お兄さまを含めて2年前にあったお母さまのお葬式に参列していなかった人たちだった。
「……参列者が随分と変わっていますね。」
「………そうね。……お母さまの時はお母さまの親族が主だったからではないかしら。」
「ーー、……そう、ですか。」
わたしとジェフリーは1度見たりすれ違ったりした人間をも忘れない。
わたしが入場した時から感じていた違和感にはジェフリーも思いがあったのだろう。
ここに、お父さまのお葬式に集まっている人間が、初見の人間しかいないということに。
“生け贄”
これがまず初めにこの現状に対してわたしの頭に思い浮かび、もっとも適切だと判断した言葉だ。
ここにいるほとんど全ての人間がわたしたちに、否、わたしに敵意にも似た感情を抱いており、それを誰も隠そうともしていない。そしてなにより、お兄さまがこの場にいないということだ。
……ここにいる人間は、おそらく全員が反マイグレックヒェンもしくは、それに近い中立の派閥の人間なのだろう。
そして、これらの現状から判別できることは、お兄さまとマイグレックヒェンに従っている派閥の人間は、わたしを生け贄にしたということだけだ。
……プラス思考にすると、こうも考えられる。生け贄として生き残るか否かによって、わたしの利用価値について考える、ということだ。
プラスでは無いって?
初めから捨てることしか選択肢にないのではなく、ここでの働きによって生き残れるという時点でわたしにはプラスのように写っているわ。
でも、わたしはここで本性を出すわけにはいかない。
利用しようとする人間たちに、愚かで素直で利用しやすい人間のように映らなければならない。
キレすぎてはいけない。
利用しにくいと思われてはいけない。
利用できる、利用すべきだ、でも、最後まで捨てては勿体ないと思われる、ほんの少しだけ賢い駒で在らなくてはいけない。
「……ジェフ、必ず生き残ろうね。」
「…あぁ……。」
わたしたちは、決意を新たに敵を見据えた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
昨日1話閑話を入れました。
よければ9,5話に戻って読んでみてください。
「…………分かったわ。いきましょう。」
ジェフリーはわたしの感情を知ってか知らずか、ここを離れるように促した。
「……お兄さまは?」
「…まだいらっしゃっていないようです。」
「……そう。」
ジェフリーが言うのならば間違いないだろう。
……ここにいる人は、お兄さまを含めて2年前にあったお母さまのお葬式に参列していなかった人たちだった。
「……参列者が随分と変わっていますね。」
「………そうね。……お母さまの時はお母さまの親族が主だったからではないかしら。」
「ーー、……そう、ですか。」
わたしとジェフリーは1度見たりすれ違ったりした人間をも忘れない。
わたしが入場した時から感じていた違和感にはジェフリーも思いがあったのだろう。
ここに、お父さまのお葬式に集まっている人間が、初見の人間しかいないということに。
“生け贄”
これがまず初めにこの現状に対してわたしの頭に思い浮かび、もっとも適切だと判断した言葉だ。
ここにいるほとんど全ての人間がわたしたちに、否、わたしに敵意にも似た感情を抱いており、それを誰も隠そうともしていない。そしてなにより、お兄さまがこの場にいないということだ。
……ここにいる人間は、おそらく全員が反マイグレックヒェンもしくは、それに近い中立の派閥の人間なのだろう。
そして、これらの現状から判別できることは、お兄さまとマイグレックヒェンに従っている派閥の人間は、わたしを生け贄にしたということだけだ。
……プラス思考にすると、こうも考えられる。生け贄として生き残るか否かによって、わたしの利用価値について考える、ということだ。
プラスでは無いって?
初めから捨てることしか選択肢にないのではなく、ここでの働きによって生き残れるという時点でわたしにはプラスのように写っているわ。
でも、わたしはここで本性を出すわけにはいかない。
利用しようとする人間たちに、愚かで素直で利用しやすい人間のように映らなければならない。
キレすぎてはいけない。
利用しにくいと思われてはいけない。
利用できる、利用すべきだ、でも、最後まで捨てては勿体ないと思われる、ほんの少しだけ賢い駒で在らなくてはいけない。
「……ジェフ、必ず生き残ろうね。」
「…あぁ……。」
わたしたちは、決意を新たに敵を見据えた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
昨日1話閑話を入れました。
よければ9,5話に戻って読んでみてください。
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。


新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる