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10. お葬式という名の戦場

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この話の前に1話閑話を入れました。よければ読んでみてください。

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 好奇、侮辱、蔑み、憎しみ、下心。

 複数の視線が一気に集まり、わたしに突き刺さった。
 でも、ここではわたしは、表向き大人の事情が分からない愚かで薄幸な小娘でいるのが得策だ。
 出る杭は打たれる。
 ここでは無駄な交戦は避けるべき、というのがわたしの考えだ。

 だけれど、舐められてはいけない。

 手が小刻みに震える。足が動かなかくなる。呼吸が、……。

「お嬢様、旦那様はこちらです。参りましょう。」
「……えぇ、そうね。」

 とっさにわたしの状況に気がついたジェフリーがサポートしてくれた。

 わたしは堂々としたままコツコツと音を立ててホールのど真ん中を細心の注意を払った優雅に見える仕草で歩いた。
 ジェフリーも苦しくて悲しそうな、主を気遣う表情を浮かべてわたしの半歩後ろを優雅に見える仕草で歩いた。

 そして、さも、わたしもジェフリーもその歩き方、関係が当たり前であるかのようにして歩けば、視線の中に、驚愕、恐怖、興味が増えた。

 幸い私の表情は長くて美しいベールに隠れている。だから、緊張によってわたしの表情が硬くなっていることには誰も気づかない、気づけない。
 ……ジェフリーは本当にすごい。この醜くて苦しい視線の中、軽々と表情を操り、わたしを庇っている。約束通り陰ながらわたしを守ってくれている。……本当に出来すぎた従者だ。

 それに、彼のサポートがなければ今頃わたしは………。

 ……起こらなかった未来に怯えてはダメ。しっかりしなくちゃ、ちゃんとしなくちゃ。ジェフリーにこれ以上迷惑をかけないようにしなくちゃ。お葬式という名の戦争は、まだ、始まったばかりなのだから。

 コツンという音を立てて立ち止まったわたしの視線の先には豪勢な棺があった。美しくて瑞々しい花々が飾られ、繊細な彫りが施された棺はおそらく大きくて立派なお屋敷が1つ買えるくらいの値段がするのだろう。
 これを買うのに領民のお金が、領民が必死に働いて稼いで、領のために使ってもらうために納めた税金が使われていると思うと虫唾が走る。領内で収穫されたものや、作られたものならばまだしも、は領内で収穫できたり、作れるものではない。

 棺のを覗くと、棺の中には花に包まれた自分と同じ髪色の華やかな男が横たわっていた。
 ……おそらくこの棺はこの華やかで美しい容姿とは裏腹に醜い男が生前に用意していたものだろう。
 この、考えなしの異能者であるにもか変わらず、否、異能者であるから馬鹿で愚かになってしまった男が用意していたものだろう。

 本当に、虫唾が走る。

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読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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