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7. あまいあめ玉

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 くさくさと仕上げにピンを刺したジェフは満足げな表情で頷いた。

「はい、できたよ。今日の髪型は自信作だよ。きれいにできたと思う。鏡をどうぞ。」

 くの字型の鏡をかざして“見てみて!”と言わんばかりにジェフは声を上げた。

「ありがとう。」

 わたしはジェフに向き合った後で、きれいに見える社交用の笑みを浮かべてお礼を言ってみた。

「むぅー、僕はレティーの率直な感想が聞きたいんだけど?」
「ふふふ、とっても上手よ!本当にジェフは器用よね!」
「ありがとう。でも、そんなに褒めちぎってもあめ玉しか出てこないよ?」

 そう言ってジェフはあーんとお口を開けたわたしのお口にあめ玉をころんと転がした。

「……おいしい……。んー?これはキウイフルーツ?」
「うん、キウイフルーツには精神にいい効果を与えるって聞いたから。」

 はにかみながら言ったジェフは本当に愛らしかった。
 昔のわたしならば、それこそ顔を真っ赤にして固まってしまっていただろう。

「………本当にありがとう、ジェフ………。」

 でも、そんな顔はおくびも出さずにわたしは心を込めてお礼を言った。

「ふふふ、レティー、隠してるつもりだろうけれど、耳まで赤いよ?それに僕、こう見えて君の精神面にも気をつかえるくらいには優秀なんだよ?」
「………うん、身を持ってよ~く知ってるわ。
 それに、主人の暴いて欲しくないことをあっさりと暴いて主人から現在進行形で不興を買っているのもよ~く知っているわよ?」
「………あははは、そりゃどーも、かな?」

 にーっこりと深く笑いながら言ったわたしに対してジェフは困ったように笑った。

「………ジェフもあめ玉食べたら?」
「君の嫌がらせのレパートリーは3歳の頃からなに1つ増えないんだね……。」

 ジェフは呆れたように言った。
 たしかに、ジェフ相手に嫌がらせと言ってもわたしは彼の苦手な甘いものを勧めることしかできない。それもこれも、わたし自身がそもそもジェフを罰するのではなく、甘やかしたいと思っているからだ。だから、仕方がない。仕方がないのだ。

「ねぇジェフ、わたしにできる嫌がらせの中で、何が1番あなたにとって嫌なことかしら?」
「………それ、本人に聞いちゃうの?」
「うん、ダメ?」
「駄目、ではないけど……。普通は聞かないよ?」

 小首をこてんと傾げて上目遣いでお願いしてみたけれど、これでジェフにできるのは嫌がらせではなく、困らせることだ。解せぬ。

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読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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