冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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5. 異能者

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「……ねぇ、ジェフは、異能者になりたかった?」

 再び髪を結うために手を動かし始めたジェフに対して、わたしは硬い声音で静かに問いかけた。

「ん~、僕はレティーが何を考えているのかよく分かんないけど、そりゃあやっぱり羨ましいよ。だって、異能者って世間一般では常人よりも賢くて、運動神経がよくて、器用で、魔法が使えるって認識なんだから。僕だって魔法を使ってみたいし、お勉強しなくても賢くなってみたいし、運動神経がとてもよくなってみたいしね。」
「異能者であるわたしより、ジェフの方が運動神経はいいし、器用だわ……。」
「なぁに?レティーは僕のことうらやましいの?」

 生意気なことを得意そうなお顔で“えっへん”と言うジェフにわたしはとってもムカついた。

「………そのお口にジェフの大好きなあま~い大きなお菓子でも突っ込んであげましょうか?」
「……レティーは僕が甘いものが苦手なの知ってるよね?」
「そうだったかしら?」

 澄まし顔は比較的得意な顔だ。

「それでさ、レティー、話を戻すんだけど、僕は、異能者が恐れられているのでなく、異能者を畏怖の対象としていることで、この国の均衡を保っているのではないかと思っているんだ。だって、異能者っていうのは王家と王家に連なる三大公爵家とその分家だけにしか生まれないんだから。」
「そうね。」

 不思議なことに異能者は、異能者の親か、異能者の家系の親からしか生まれない。

「それに、異能者って言うほど怖くなくない?」
「わたしは異能者だから分かんない。でも、周りの人たちは怖いって言っているわ。」
「それは異能者だって知られている人間だけだろう?実際、異能者だって明かしていないレティーは一切怖がられていないじゃないか。……それに、僕は異能者よりも、訓練中の父上の方が正直言って怖いよ……。」

 ジェフはそう言ってプルプルと肩を抱いて震えて見せた。

「あ!前髪編み上げれたけど、これからどうしたい?」

 ジェフはそう言って話題を転換した。ジェフはいつも“訓練”についての言及を避けるようにこの話題になるとすぐに話題を転換する。

「……さっきも言ったけれど、特に希望はないわ。あなたに全部お任せする。」
「ん、了解。身につけるものはそのワンピースに手袋に靴下に靴にネックレス、それにベールを被って完了?」
「うん、そうするつもり。」

 ノースリーブの黒いレースのドレスワンピにお揃いのレースで作られた靴下に磨き込まれた真っ黒な靴、そして何より目を惹くキラキラ光る大粒のアクアマリンのついた黒いレースのチョーカーを身につけたわたしの視線の先には、黒い光沢のある糸で編まれた、繊細な美しいレースで作られたベールのついた帽子が置かれていた。

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読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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