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3. わたしのわがまま
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「はーあ、おもしろかったわね。」
「そうだね。君と一緒にいるのは本当に愉快だよ。」
わたしたちはにこっと笑い合った。
キラキラとした朝日を背に立つジェフが眩しかった。
「……緊張は解れた?」
「……気づいていたの?」
わたしは思わずアクアマリンの瞳をまんまるににして、にっこりと微笑んでいるジェフを見つめた。
「当たり前だろう?いつから一緒に過ごしてるの?」
「……今わたしが8歳で出会ったのが3歳の頃だったはずだから、かれこれ5年になるわね。」
「……もう、そんなに仕えているんだね。あの頃の僕には全く想像もつかなかったよ。」
ジェフはアップにしていない左側の髪を耳にかけながら言った。
「……ジェ、」
「さぁ!お嬢様、お支度のお時間です。鏡台の前にお座りください。お髪を整えさせていただきます。」
「…………分かったわ、ジェフリー。それにしても、お嬢さまの支度は本当に面倒くさいわね。」
「お嬢様が何言っているんですか……。さっさと準備いたしますよ。ただでさえ時間がないのに、無駄話をたくさんしてしまったのですから。」
すっと態度を変えたジェフに合わせて、わたしとジェフの関係は気の知れた幼馴染からお嬢さまと従者に早変わりした。
ゆっくりと名残惜しい気持ちを残しながらもわたしは寝室に備え付けてあるバルコニーを立ち去り、わたしの瞳の色であるアクアマリンをイメージにした可愛らしい寝室にある、繊細な植物の彫りが施された真っ白な鏡台の前に歩みを進めた。
「今日はどんな髪型がご希望ですか?」
「……右側の前髪を上げてくれたら他には何も希望はないわ。」
席に着くとジェフリーが後ろに立って光の反射で七色に見える長くてまっすぐなわたしの白銀髪に櫛を通して質問した。
「……お嬢様。」
わたしはぐっと眉根を寄せて手を止めたジェフリーに振り返って上目遣いに懇願した。
「……ねぇ、ジェフ、今日はどうしてもお揃いにしたいの。ダメ、かしら?」
「うぐっ、…………きょ、今日だけの特別だからね!?」
「ありがとう!」
ジェフはわたしに愛称で呼ばれることと、わたしの上目遣いにとても弱い。
ジェフにかまってほしい時や困らせた時にわたしがよく使う、わたしだけが使える特別な手段だ。
わたしは特別という言葉が大嫌いだ。けれど、この特別だけは不愉快ではないし、どちらかというと絶対に手放したくないと思っている。本当に気持ちというのはわたしにはよく分からない。
*******************
読んでいただきありがとうございます♪♪♪
こちらの作品は不定期更新です。
ですが、ストックが続く限りは毎日朝の9時に更新します。
楽しく読んでいただけると幸いです(๑>◡<๑)
「そうだね。君と一緒にいるのは本当に愉快だよ。」
わたしたちはにこっと笑い合った。
キラキラとした朝日を背に立つジェフが眩しかった。
「……緊張は解れた?」
「……気づいていたの?」
わたしは思わずアクアマリンの瞳をまんまるににして、にっこりと微笑んでいるジェフを見つめた。
「当たり前だろう?いつから一緒に過ごしてるの?」
「……今わたしが8歳で出会ったのが3歳の頃だったはずだから、かれこれ5年になるわね。」
「……もう、そんなに仕えているんだね。あの頃の僕には全く想像もつかなかったよ。」
ジェフはアップにしていない左側の髪を耳にかけながら言った。
「……ジェ、」
「さぁ!お嬢様、お支度のお時間です。鏡台の前にお座りください。お髪を整えさせていただきます。」
「…………分かったわ、ジェフリー。それにしても、お嬢さまの支度は本当に面倒くさいわね。」
「お嬢様が何言っているんですか……。さっさと準備いたしますよ。ただでさえ時間がないのに、無駄話をたくさんしてしまったのですから。」
すっと態度を変えたジェフに合わせて、わたしとジェフの関係は気の知れた幼馴染からお嬢さまと従者に早変わりした。
ゆっくりと名残惜しい気持ちを残しながらもわたしは寝室に備え付けてあるバルコニーを立ち去り、わたしの瞳の色であるアクアマリンをイメージにした可愛らしい寝室にある、繊細な植物の彫りが施された真っ白な鏡台の前に歩みを進めた。
「今日はどんな髪型がご希望ですか?」
「……右側の前髪を上げてくれたら他には何も希望はないわ。」
席に着くとジェフリーが後ろに立って光の反射で七色に見える長くてまっすぐなわたしの白銀髪に櫛を通して質問した。
「……お嬢様。」
わたしはぐっと眉根を寄せて手を止めたジェフリーに振り返って上目遣いに懇願した。
「……ねぇ、ジェフ、今日はどうしてもお揃いにしたいの。ダメ、かしら?」
「うぐっ、…………きょ、今日だけの特別だからね!?」
「ありがとう!」
ジェフはわたしに愛称で呼ばれることと、わたしの上目遣いにとても弱い。
ジェフにかまってほしい時や困らせた時にわたしがよく使う、わたしだけが使える特別な手段だ。
わたしは特別という言葉が大嫌いだ。けれど、この特別だけは不愉快ではないし、どちらかというと絶対に手放したくないと思っている。本当に気持ちというのはわたしにはよく分からない。
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