冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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2. 優しい幼馴染

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「悲しみに暮れていたらと思って来てみたのですが、平気そうで何よりです。」

 ジェフこと、ジェフリー・ガルシアはそう言ってほっとしたように柔らかな微笑みを浮かべた。

「……今は屋敷内が忙しいからここには誰も来ないわ。」
「そうだね……。君は父親が亡くなって悲しくないのかい?」
「ーー分からないわ。」

 ジェフは座っているわたしの頭をふわふわと撫でた。

「僕は君の本当に思っていることを知りたいな。」
「……ーー何も感じていないわ。悲しくも辛くもない。ただ、“あぁ、そうなのね。”って感じ。」
「無理もないよ。だって、あいつは君が物心ついた頃から君に1度も会いに来たことがないんだから。」
「……そうね。」

 沈黙が心地よかった。ジェフはわたしの言いたいことを言わなくても理解してくれる。わたしの全てを認めてくれる、許してくれる。だから、彼との時間は心地がよい。彼はわたしの存在を否定しないでくれるから……。


 ざわざわとした喧騒が大きくなってきた。そろそろお葬式が始まるのだろう。
 わたしはゆったりとした仕草で立ち上がり、ぐーっと伸びをした。

「それ、僕以外の前でしちゃダメだからね。」

 いつもよりも少しだけ真剣な声音で苦笑しながら彼が言った。

「………なんで?」
「お嬢さまにあるまじき行動だから。」
「それだけ?」
「見た人がびっくりして倒れちゃう。」

 存外まともではない、茶目っ気の多い回答が返って来た。
 だが、これは“イェス”と答えなければ、永遠と説得される羽目になるだろう。

「………分かった。ジェフの前ではいいの?」
「良いよ。僕は見慣れているから。」
「……そうね。」

 ジェフとは物心がつく前から一緒に過ごしている。だから彼にはもう、わたしの本性を全て曝け出している。伸びくらいではびっくりしないし、できないだろう。

「……イメージでものを言わないで欲しいわ。それに、お嬢さまも人間なのにね。」

 つい、ぽろりと愚痴をこぼしてしまった。

「そうだね。でも、イメージの影響力って案外すごいんだよ?」

 めざとくわたしの愚痴を拾ったジェフは、真顔でずいっとわたしに人差し指を突き出しながら凄みの含んだ平坦な声で言った。

「……確かにそうね。
 ジェフもこんななりでも侯爵家のおぼっちゃまだものね!」

 わたしは反撃と言わんばかりにジェフの突かれたら弱いところをツンとつついた。

「うっ!そ、それは引き合いに出しちゃダメだよ、レティー!!」
「ふふふ、そうね。……ふふふ、ははは……。」
「もーう、ふふ、ははっはははは……。」

 静かだった部屋に長い間わたしとジェフの楽しげな笑い声が響いた。

*******************

読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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