1 / 117
1. わたしという人間
しおりを挟む
新年あけましておめでとうございます⛩
*******************
小鳥の可愛らしい囀りを聴きながら、わたし、レティシア・マイグレックヒェンは真っ黒な喪服に身を包んで雲一つない青空を見上げていた。
喪服といえばお葬式。
そう、今日は昨日事故によって突然に亡くなったわたしのお父様であるメーリン・マイグレックヒェン公爵のお葬式だ。
けれど、不思議なくらいにわたしは何も感じていない。これなら2年前に亡くなったお母様であるカミラ・マイグレックヒェンの時の方が思うところがあっただろう、というくらいにわたしは何も感じていない。
まぁ、思うところと言っても母がいなくなったことによるストレス解消や安心、早死にした母に対する憐憫だったが……。
褒めるところがないくらいにどうしようもなく、我儘だった母の話は1度置いておいて、父にわたしが一切の思うところがない理由について考えよう。でもまぁ、考えるまでもなく、興味が、否、思う理由がない理由は明確でとても簡単だけれど……。
もったいぶらずに話すと、彼に、ではなく忙しい父にわたしが会ったことが1度もないからだ。
ね、とっても簡単でしょう?
父は「忙しい」というのを理由にして大嫌いな恋人との壁になった妻にそっくりなわたしに生まれてすぐに名前をつけて以来、1度も会いに来なかった。しかも、初めて会った時につけた唯一の名前は、実は執事に考えさせたものらしい。あと、わたしの様子は執事に確認はさせていたみたいだけれど、直接私に会いに来たことは本当に1度もなかった。
ーーねぇ、貴方は会ったこともない父親に情を持つことができる?ーー
答えは揃いも揃ってみんな“ノー”でしょう?
誰か1人でも“イェス”と答えられるかしら?もし、答えられるのならば、それは聖職者とかなんかの清く正しいお偉ーい方でしょうね。
だからわたしも一般人と一緒。父はわたしにとってただの他人。お顔とお名前だけを知っている何の変哲もないただの他人なの。
コンコン
「失礼いたします、お嬢様。ジェフリーです。」
ノックの音とともに聴こえてきたのははっきりとした幼さの残る男の子の声だった。
「……どうぞ。」
ガチャ
わたしの静かな返事から一拍遅れて、控えめに扉の開かれる音が鳴ると共に、幼馴染であり、従者でもある焦げ茶の髪と瞳にとても整った容姿を持った自分より少しだけ早く生まれた同い年の少年が入室してきた。
「いらっしゃい、ジェフ。」
*******************
読んでいただきありがとうございます😭😊😭
最後まで楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
*******************
小鳥の可愛らしい囀りを聴きながら、わたし、レティシア・マイグレックヒェンは真っ黒な喪服に身を包んで雲一つない青空を見上げていた。
喪服といえばお葬式。
そう、今日は昨日事故によって突然に亡くなったわたしのお父様であるメーリン・マイグレックヒェン公爵のお葬式だ。
けれど、不思議なくらいにわたしは何も感じていない。これなら2年前に亡くなったお母様であるカミラ・マイグレックヒェンの時の方が思うところがあっただろう、というくらいにわたしは何も感じていない。
まぁ、思うところと言っても母がいなくなったことによるストレス解消や安心、早死にした母に対する憐憫だったが……。
褒めるところがないくらいにどうしようもなく、我儘だった母の話は1度置いておいて、父にわたしが一切の思うところがない理由について考えよう。でもまぁ、考えるまでもなく、興味が、否、思う理由がない理由は明確でとても簡単だけれど……。
もったいぶらずに話すと、彼に、ではなく忙しい父にわたしが会ったことが1度もないからだ。
ね、とっても簡単でしょう?
父は「忙しい」というのを理由にして大嫌いな恋人との壁になった妻にそっくりなわたしに生まれてすぐに名前をつけて以来、1度も会いに来なかった。しかも、初めて会った時につけた唯一の名前は、実は執事に考えさせたものらしい。あと、わたしの様子は執事に確認はさせていたみたいだけれど、直接私に会いに来たことは本当に1度もなかった。
ーーねぇ、貴方は会ったこともない父親に情を持つことができる?ーー
答えは揃いも揃ってみんな“ノー”でしょう?
誰か1人でも“イェス”と答えられるかしら?もし、答えられるのならば、それは聖職者とかなんかの清く正しいお偉ーい方でしょうね。
だからわたしも一般人と一緒。父はわたしにとってただの他人。お顔とお名前だけを知っている何の変哲もないただの他人なの。
コンコン
「失礼いたします、お嬢様。ジェフリーです。」
ノックの音とともに聴こえてきたのははっきりとした幼さの残る男の子の声だった。
「……どうぞ。」
ガチャ
わたしの静かな返事から一拍遅れて、控えめに扉の開かれる音が鳴ると共に、幼馴染であり、従者でもある焦げ茶の髪と瞳にとても整った容姿を持った自分より少しだけ早く生まれた同い年の少年が入室してきた。
「いらっしゃい、ジェフ。」
*******************
読んでいただきありがとうございます😭😊😭
最後まで楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。

歪んだ恋にさようなら
木蓮
恋愛
双子の姉妹のアリアとセレンと婚約者たちは仲の良い友人だった。しかし自分が信じる”恋人への愛”を叶えるために好き勝手に振るまうセレンにアリアは心がすり減っていく。そして、セレンがアリアの大切な物を奪っていった時、アリアはセレンが信じる愛を奪うことにした。
小説家になろう様にも投稿しています。

新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる