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1. わたしという人間

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新年あけましておめでとうございます⛩

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 小鳥の可愛らしいさえずりを聴きながら、わたし、レティシア・マイグレックヒェンは真っ黒な喪服に身を包んで雲一つない青空を見上げていた。

 喪服といえばお葬式。
 そう、今日は昨日事故によって突然に亡くなったわたしのお父様であるメーリン・マイグレックヒェン公爵のお葬式だ。
 けれど、不思議なくらいにわたしは何も感じていない。これなら2年前に亡くなったお母様であるカミラ・マイグレックヒェンの時の方が思うところがあっただろう、というくらいにわたしは何も感じていない。
 まぁ、思うところと言っても母がいなくなったことによるストレス解消や安心、早死にした母に対する憐憫だったが……。
 褒めるところがないくらいにどうしようもなく、我儘だった母の話は1度置いておいて、父にわたしが一切の思うところがない理由について考えよう。でもまぁ、考えるまでもなく、興味が、否、思う理由がない理由は明確でとても簡単だけれど……。

 もったいぶらずに話すと、彼に、ではなく忙しい父にわたしが会ったことが1度もないからだ。

 ね、とっても簡単でしょう?
 父は「忙しい」というのを理由にして大嫌いな恋人との壁になった妻にそっくりなわたしに生まれてすぐに名前をつけて以来、1度も会いに来なかった。しかも、初めて会った時につけた唯一の名前は、実は執事に考えさせたものらしい。あと、わたしの様子は執事に確認はさせていたみたいだけれど、直接私に会いに来たことは本当に1度もなかった。

ーーねぇ、貴方は会ったこともない父親に情を持つことができる?ーー

 答えは揃いも揃ってみんな“ノー”でしょう?
 誰か1人でも“イェス”と答えられるかしら?もし、答えられるのならば、それは聖職者とかなんかの清く正しいお偉ーい方でしょうね。
 だからわたしも一般人と一緒。父はわたしにとってただの他人。お顔とお名前だけを知っている何の変哲もないただの他人なの。

 コンコン

「失礼いたします、お嬢様。ジェフリーです。」

 ノックの音とともに聴こえてきたのははっきりとした幼さの残る男の子の声だった。

「……どうぞ。」

 ガチャ

 わたしの静かな返事から一拍遅れて、控えめに扉の開かれる音が鳴ると共に、幼馴染であり、従者でもある焦げ茶の髪と瞳にとても整った容姿を持った自分より少しだけ早く生まれた同い年の少年が入室してきた。

「いらっしゃい、ジェフ。」

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読んでいただきありがとうございます😭😊😭

最後まで楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

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