『完』婚約破棄されたのでお針子になりました。〜私が元婚約者だと気づかず求婚してくるクズ男は、裸の王子さまで十分ですわよね?〜

桐生桜月姫

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96 断罪の後に

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▫︎◇▫︎

 搬送されていくのを見送ったマリンソフィアとアルフレッド、そして国王とクラウスは疲れ切った顔つきでそれぞれ大きな溜め息をついた。
 王妃は口汚い言葉を金切り声で叫びまくり、王太子は精神がやられてしまって、もう1言も話せなくなってしまったようだ。第2王子は泣いて謝罪しながら、大人しく自分の足で北の塔に幽閉されに行ったらしい。今後、クラウスの判断によっては釈放もあり得るとのことだ。
 そして、トライ公爵については、即刻捕まえて地下牢に突っ込んだ。余罪調査のために皆で公爵家に乗り込んでまだ30分しか経っていないが、えげつない量の余罪がわんさかわんさかと、叩けば叩くほど出てくる。中にはマリンソフィアが知らないこともあり、もう苦笑するしかない。

「それでは、新聞社には王妃の罪とルビ王太子の罪、そして御輿になってしまったルビ第2王子殿下について書かせていただきます。陛下はこの責任をとって、王位をクラウス殿下に今日中に譲っていただきたく存じますわ。トライ公爵関連で出てしまった足りない人員に関しては、クラウス殿下とわたくしで密かに育てた貴族の3男や次女以降の人間がおりますので、そこから補充してください」
「承知した………」

 憔悴し切った国王は何も文句を言わず、椅子についていた隠し扉を開けて王位に関するものを、その場で全てクラウスに渡してしまった。本来ならば式典が必要なところだが、マリンソフィアの命令に国王は逆らえない。

「クラウス殿下、この際ですので、この国の膿は全てしっかり出し切ってください。えぇっとあとは………、そう、そのミルクティーブラウンの髪染めはさっさと落として、元の髪色に戻して、前髪をばっさり切ってください。あぁ、あと、瓶底眼鏡も禁止ですからね」

 マリンソフィアはクラウスに対してビシッと扇子で指差すと、アルフレッドに寄り添ってくるりと踵を返した。

「わたくしはこれにて失礼させていただきますわ。もう会うことはないかと存じますが、精々お元気にお過ごしくださいませ。それでは、ご機嫌よう」
「ーーーありがとうございました、マリンソフィアさま」

 深々と頭を下げたクラウスは、その後国王を辺境の地へと追いやったらしい。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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