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88 クラウスと王太子の口論
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「なっ、」
驚愕と怒り、今にも飛び出してきそうな王太子のことを見つけて、マリンソフィアは冷たい瞳を王太子へと向ける。
「わたくし、あなたが非人道的すぎて、もう気味が悪いんですの」
「………王太子殿下、本当に彼女に求婚なさったのですか?」
「………………」
王太子はクラウスの質問に答えない。だが、クラウスはどうしても無言を肯定と取りたくなかった。王位を争う身としてはいけないことかもしれないが、彼は長年王太子に仕えていたこともあり、王太子への情があった。さすがに婚約破棄については意見が分かれ、対立してしまったが、そこそこいい関係を築いていたはずだ。
だからこそ、彼のやったことが許せなかった。
「皆の前で堂々と罵詈雑言を吐きながら婚約破棄を行った彼女に対して、本当に求婚を行ったのですか!?」
マリンソフィアは自分のために怒る男を慈愛の瞳で見つめた後、ふわりと微笑んで言葉を発する。
「………無駄ですわよ。求婚を行ったことは事実だし、証拠を出せる人間はたくさんいますわ。それに、その男は最低なことに、わたくしに婚約破棄を叩きつけた2日後のお昼過ぎに、わたくしに求婚してきたのですから」
「なっ、………う、うそ、ですよね………?」
「嘘を言ってい何になりますの?それに、クラウス殿下はわたくしのことを、よーくご存知のはずですわよ」
長年の無能な王太子を支えるという重職を共に担ってきた相棒に対して、マリンソフィアは気色が悪いくらいに満面の笑みを浮かべる。
「こんのっ、馬鹿殿下っ!!何を血迷っているのですかあ!?」
「なっ、馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!!この完璧王子と名高いテナートさまに対して。馬鹿というのは間違っているだろう!!」
不毛な叫び合いに、マリンソフィアの怒りは増していくが、ここで怒鳴っても後から必要になるであろう体力から考えて、しんどくなってしまうことが目に見えているマリンソフィアは、ただ静かに口論を見守っていた。
「あなたさまが馬鹿じゃなかったことなんてありませんよっ!!そもそも!誰のおかげで並みの人間を演じられていたと思っているのですかっ!!公務は全て私とマリンソフィアさまとで分担して行い!そして、社交の場での活動は全てマリンソフィアさまの圧倒的な手腕と情報力によってどうにかなっていただけなのですよ!?誰があれだけの貴族の情報をまとめ上げていたと思っているのですかっ!!」
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
驚愕と怒り、今にも飛び出してきそうな王太子のことを見つけて、マリンソフィアは冷たい瞳を王太子へと向ける。
「わたくし、あなたが非人道的すぎて、もう気味が悪いんですの」
「………王太子殿下、本当に彼女に求婚なさったのですか?」
「………………」
王太子はクラウスの質問に答えない。だが、クラウスはどうしても無言を肯定と取りたくなかった。王位を争う身としてはいけないことかもしれないが、彼は長年王太子に仕えていたこともあり、王太子への情があった。さすがに婚約破棄については意見が分かれ、対立してしまったが、そこそこいい関係を築いていたはずだ。
だからこそ、彼のやったことが許せなかった。
「皆の前で堂々と罵詈雑言を吐きながら婚約破棄を行った彼女に対して、本当に求婚を行ったのですか!?」
マリンソフィアは自分のために怒る男を慈愛の瞳で見つめた後、ふわりと微笑んで言葉を発する。
「………無駄ですわよ。求婚を行ったことは事実だし、証拠を出せる人間はたくさんいますわ。それに、その男は最低なことに、わたくしに婚約破棄を叩きつけた2日後のお昼過ぎに、わたくしに求婚してきたのですから」
「なっ、………う、うそ、ですよね………?」
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不毛な叫び合いに、マリンソフィアの怒りは増していくが、ここで怒鳴っても後から必要になるであろう体力から考えて、しんどくなってしまうことが目に見えているマリンソフィアは、ただ静かに口論を見守っていた。
「あなたさまが馬鹿じゃなかったことなんてありませんよっ!!そもそも!誰のおかげで並みの人間を演じられていたと思っているのですかっ!!公務は全て私とマリンソフィアさまとで分担して行い!そして、社交の場での活動は全てマリンソフィアさまの圧倒的な手腕と情報力によってどうにかなっていただけなのですよ!?誰があれだけの貴族の情報をまとめ上げていたと思っているのですかっ!!」
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