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81 マリンソフィアはご褒美をあげたい
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「そろそろ黎桜の晴れ舞台ね。わたくし、黎桜のことをちゃんと見て、後でご褒美をあげなくっちゃいけないわ」
ミルクにマグロ、猫用のケーキにふっかふかの黎桜専用ベッドを用意したマリンソフィアは、ふんすふんすと拳を握った。彼の役割は、野良猫に扮して王太子の透明な服に、カラフルな足跡をこれでもかというほどに付けてくることだ。アルフレッドは何度も練習台として黎桜の肉球スタンプの餌食になってきた。
「おチビさんにもな」
「そうね、特別手当とは別に何かして挙げられたらいいんだけれど………」
顎に手を当ててう~んと悩み込んでいると、アルフレッドが不思議そうな顔をして提案してくる。
「………普段着ようの服でも仕立ててやれば?」
晴天の霹靂だ。お礼には名店のおやつなどを菓子折りとして渡したりするのが、マリンソフィアの常識だったのだ。だから、自分で作ったものをという認識などなかった。
「あら、それも良さそうね。あの子なら、ひまわりみたいな黄色いワンピースが似合いそう。レースとリボンをふんだんに使って、可愛らしくするの!!」
「………本当に、服を仕立てるのが好きなんだな」
「えぇ!!わたくしのスローライフって最高でしょう!!」
マリンソフィアは思わずぴょんぴょんと飛んで、アルフレッドに力説する。けれど、彼は胡乱気な表情をして不思議そうに首を傾げている。
「………すろー、らいふ?」
「? 知らないの?自由気ままにマイペースな生活を送ることよ?」
「………のんびりとした生活のことじゃないのか?」
「? 十分のんびりしているじゃない。ご飯は3食にお風呂にも足を伸ばして入れて、そして何より、6時間睡眠にお昼寝つきよ?何がスローライフじゃないって言うわけ?」
マリンソフィアは王太子の婚約者時代の怒涛の毎日を思い出して、遠い目をしながら、指折り今のスローライフを教えてあげる。王太子の婚約者時代のマリンソフィアは、どうにかこうにか時間を作って、『青薔薇服飾店』に来る日以外は1日1食取れたらラッキーで、お風呂には嫌がらせ専門の侍女が入ってきて、これでもかというほどに綺麗になるという激痛マッサージを受けさせられ、睡眠時間はよくて3時間ちょっと。大体が徹夜だった。お昼寝などもっての外だった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
ミルクにマグロ、猫用のケーキにふっかふかの黎桜専用ベッドを用意したマリンソフィアは、ふんすふんすと拳を握った。彼の役割は、野良猫に扮して王太子の透明な服に、カラフルな足跡をこれでもかというほどに付けてくることだ。アルフレッドは何度も練習台として黎桜の肉球スタンプの餌食になってきた。
「おチビさんにもな」
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顎に手を当ててう~んと悩み込んでいると、アルフレッドが不思議そうな顔をして提案してくる。
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「えぇ!!わたくしのスローライフって最高でしょう!!」
マリンソフィアは思わずぴょんぴょんと飛んで、アルフレッドに力説する。けれど、彼は胡乱気な表情をして不思議そうに首を傾げている。
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マリンソフィアは王太子の婚約者時代の怒涛の毎日を思い出して、遠い目をしながら、指折り今のスローライフを教えてあげる。王太子の婚約者時代のマリンソフィアは、どうにかこうにか時間を作って、『青薔薇服飾店』に来る日以外は1日1食取れたらラッキーで、お風呂には嫌がらせ専門の侍女が入ってきて、これでもかというほどに綺麗になるという激痛マッサージを受けさせられ、睡眠時間はよくて3時間ちょっと。大体が徹夜だった。お昼寝などもっての外だった。
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