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79 準備万端
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「ふふふっ、あはははははっ、」
マリンソフィアはお店に着いてからも1人ずっと笑い転げていた。ころころという愛らしい声は、誰もが魅了されてしまうが、マリンソフィアはそんなこともお構いなしに馬車を降りる際も笑い転げていた。お祭り騒ぎに乗じて初めて、裕福層専門店にきた人たちは、マリンソフィアのあまりの美しさに見入ってしまう。
「ソフィー………、君は何をそんなに笑い転げているんだい?」
困ったように甘い微笑みを浮かべた漆黒の髪に真っ赤なルビーの瞳、そして透き通る声の美丈夫に、老若問わず、女性が皆振り向くが、その彼が赤く頬を染めて視線を向ける女性を見て、皆諦めた。美しくきっちりと編み上げられた絹のような白髪に、知性を感じさせる深い海色のサファイアの瞳、そして豪華すぎる真っ赤なマーメイドラインのドレスに負けぬ美しい顔立ち。皆、一様にお似合いすぎるカップルを見て諦めたのだ。その実は、ただの幼馴染で一応婚約者だという微妙な関係だとは気付かずに。
「ふふふっ、見てからのお楽しみ。あぁー、早くパレードが始まらないかしら?」
「………不穏な気配しかないんだが………………」
「気にしなーい、気にしなーい!!」
マリンソフィアはこしょこしょとアルフレッドに話し、そして2人で『青薔薇服飾店』も8階へと向かった。8階はマリンソフィア専用の階のうち最も低い階で、9階同様に窓が室内を反射する特別な窓を使っている。よって、パレードを観覧するのにはもってこいなのだ。
「オペラグラスもちゃーんと用意しているわ。アル!一緒に楽しみましょう!!」
マリンソフィアは言うや否や、王家御用達のレンズ専門店で作られたらしい紋章の入っている、豪奢な作りのオペラグラスを2本取り出した。
「うちの従業員にはみーんな持たせたわ!!みんなで王太子殿下の失態を楽しむの!!」
マリンソフィアは弾んだ声で、うっとりとオペラグラスを撫でた。
「………王太子が不憫でならないよ」
「もう!そんなこと言わないの!!今日も透明な布を身に纏っただけなのに、みーんな見えないとは言えないからって理由で、『美しい礼服ですね!!』ってみーんな王太子とわたくしが縫った礼服を褒めちぎっていたんだから!!」
そう、今日は皆礼服をこれでもかと言うほどに褒めちぎっていた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
マリンソフィアはお店に着いてからも1人ずっと笑い転げていた。ころころという愛らしい声は、誰もが魅了されてしまうが、マリンソフィアはそんなこともお構いなしに馬車を降りる際も笑い転げていた。お祭り騒ぎに乗じて初めて、裕福層専門店にきた人たちは、マリンソフィアのあまりの美しさに見入ってしまう。
「ソフィー………、君は何をそんなに笑い転げているんだい?」
困ったように甘い微笑みを浮かべた漆黒の髪に真っ赤なルビーの瞳、そして透き通る声の美丈夫に、老若問わず、女性が皆振り向くが、その彼が赤く頬を染めて視線を向ける女性を見て、皆諦めた。美しくきっちりと編み上げられた絹のような白髪に、知性を感じさせる深い海色のサファイアの瞳、そして豪華すぎる真っ赤なマーメイドラインのドレスに負けぬ美しい顔立ち。皆、一様にお似合いすぎるカップルを見て諦めたのだ。その実は、ただの幼馴染で一応婚約者だという微妙な関係だとは気付かずに。
「ふふふっ、見てからのお楽しみ。あぁー、早くパレードが始まらないかしら?」
「………不穏な気配しかないんだが………………」
「気にしなーい、気にしなーい!!」
マリンソフィアはこしょこしょとアルフレッドに話し、そして2人で『青薔薇服飾店』も8階へと向かった。8階はマリンソフィア専用の階のうち最も低い階で、9階同様に窓が室内を反射する特別な窓を使っている。よって、パレードを観覧するのにはもってこいなのだ。
「オペラグラスもちゃーんと用意しているわ。アル!一緒に楽しみましょう!!」
マリンソフィアは言うや否や、王家御用達のレンズ専門店で作られたらしい紋章の入っている、豪奢な作りのオペラグラスを2本取り出した。
「うちの従業員にはみーんな持たせたわ!!みんなで王太子殿下の失態を楽しむの!!」
マリンソフィアは弾んだ声で、うっとりとオペラグラスを撫でた。
「………王太子が不憫でならないよ」
「もう!そんなこと言わないの!!今日も透明な布を身に纏っただけなのに、みーんな見えないとは言えないからって理由で、『美しい礼服ですね!!』ってみーんな王太子とわたくしが縫った礼服を褒めちぎっていたんだから!!」
そう、今日は皆礼服をこれでもかと言うほどに褒めちぎっていた。
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