72 / 102
72 おチビちゃんの到着
しおりを挟む
「店長ー!!仔猫がおるって聞いたんやけど、どこにおるん?」
とてとてと走ってきた、おチビちゃんに、マリンソフィアはにこっと笑って仔猫を見せた。
「あら、おチビちゃん、いらっしゃい。仔猫はここよ。お名前はさっきアルがつけてくれたんだけれど、『黎桜』となったわ」
「わあぁ!とってもかわええなあ!!うち、この仔のこと気に入ってしもたわ」
ぱちぱちと手を叩く彼女は、愛嬌たっぷりの顔で笑って仔猫の方にそっと手を伸ばした。
仔猫は最初は怪訝な顔をしていたが、やがてすりっと彼女の手に擦り寄る。どうやら相当に人馴れしているようだ。マリンソフィアはここでいいことを思いついた。
この仔を使えば、王太子にパレードで仕掛ける嫌がらせが尚のこと完璧になる。
「そう、よかったわ。拾ってきたばかりで汚れているから、洗って欲しいのだけれど、構わないかしら?使うのはわたくしの浴槽よ」
「ん~、承知しましたわぁ。お猫さん嫌いって結構おるさかい、そういうやつのためにも、そうした方が絶対ええわ。そういうやつに限って、相当うるさいもん」
「そうね。でも、好みは人それぞれだから、仕方がないわ」
(嫌いなものは大人になっても嫌いだし、見たくないもの)
大人気が一切ないマリンソフィアは、憂い顔ながら自分が嫌いなことは嫌いで、それを治すように他人に強要するのは間違っていると考えている。
マリンソフィアはそのあと汚れきった黎桜を見て、ほうっと溜め息をついた。
「本当はわたくしが黎桜のことを洗いたいところのなのだけれど、そんなことをしたら、クラリッサからお小言を食らってしまいそうだからね………」
「あぁー、クラリッサはとってもうるさいさかいねー。お小言が多いんよ」
おチビちゃんが我が意を得たりという顔でふむふむと頷いた。おチビちゃんは身長が低くて童顔ということもあって、なんだか、子供が背伸びをして大人に会話を合わせているかのような違和感がある。
「そうね。でも、それで秩序が乱れていないのだから、それも彼女の手腕よ」
「そうやね~。うちも、秩序をしっかり守るクラリッサのこと、ちゃーんと好きやで」
「そう、彼女が好かれているようで何よりだわ」
クラリッサの方を向きながら『好きだ!!』と言ったおチビちゃんに、マリンソフィアは苦笑した。恥ずかしがり屋のクラリッサは、おチビちゃんの評価に猛スピードで逃げて行った。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
とてとてと走ってきた、おチビちゃんに、マリンソフィアはにこっと笑って仔猫を見せた。
「あら、おチビちゃん、いらっしゃい。仔猫はここよ。お名前はさっきアルがつけてくれたんだけれど、『黎桜』となったわ」
「わあぁ!とってもかわええなあ!!うち、この仔のこと気に入ってしもたわ」
ぱちぱちと手を叩く彼女は、愛嬌たっぷりの顔で笑って仔猫の方にそっと手を伸ばした。
仔猫は最初は怪訝な顔をしていたが、やがてすりっと彼女の手に擦り寄る。どうやら相当に人馴れしているようだ。マリンソフィアはここでいいことを思いついた。
この仔を使えば、王太子にパレードで仕掛ける嫌がらせが尚のこと完璧になる。
「そう、よかったわ。拾ってきたばかりで汚れているから、洗って欲しいのだけれど、構わないかしら?使うのはわたくしの浴槽よ」
「ん~、承知しましたわぁ。お猫さん嫌いって結構おるさかい、そういうやつのためにも、そうした方が絶対ええわ。そういうやつに限って、相当うるさいもん」
「そうね。でも、好みは人それぞれだから、仕方がないわ」
(嫌いなものは大人になっても嫌いだし、見たくないもの)
大人気が一切ないマリンソフィアは、憂い顔ながら自分が嫌いなことは嫌いで、それを治すように他人に強要するのは間違っていると考えている。
マリンソフィアはそのあと汚れきった黎桜を見て、ほうっと溜め息をついた。
「本当はわたくしが黎桜のことを洗いたいところのなのだけれど、そんなことをしたら、クラリッサからお小言を食らってしまいそうだからね………」
「あぁー、クラリッサはとってもうるさいさかいねー。お小言が多いんよ」
おチビちゃんが我が意を得たりという顔でふむふむと頷いた。おチビちゃんは身長が低くて童顔ということもあって、なんだか、子供が背伸びをして大人に会話を合わせているかのような違和感がある。
「そうね。でも、それで秩序が乱れていないのだから、それも彼女の手腕よ」
「そうやね~。うちも、秩序をしっかり守るクラリッサのこと、ちゃーんと好きやで」
「そう、彼女が好かれているようで何よりだわ」
クラリッサの方を向きながら『好きだ!!』と言ったおチビちゃんに、マリンソフィアは苦笑した。恥ずかしがり屋のクラリッサは、おチビちゃんの評価に猛スピードで逃げて行った。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
1
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。
ふまさ
恋愛
「クラリス。すまないが、今日も仕事を頼まれてくれないか?」
王立学園に入学して十ヶ月が経った放課後。生徒会室に向かう途中の廊下で、この国の王子であるイライジャが、並んで歩く婚約者のクラリスに言った。クラリスが、ですが、と困ったように呟く。
「やはり、生徒会長であるイライジャ殿下に与えられた仕事ですので、ご自分でなされたほうが、殿下のためにもよろしいのではないでしょうか……?」
「そうしたいのはやまやまだが、側妃候補のご令嬢たちと、お茶をする約束をしてしまったんだ。ぼくが王となったときのためにも、愛想はよくしていた方がいいだろう?」
「……それはそうかもしれませんが」
「クラリス。まだぐだぐだ言うようなら──わかっているよね?」
イライジャは足を止め、クラリスに一歩、近付いた。
「王子であるぼくの命に逆らうのなら、きみとの婚約は、破棄させてもらうよ?」
こう言えば、イライジャを愛しているクラリスが、どんな頼み事も断れないとわかったうえでの脅しだった。現に、クラリスは焦ったように顔をあげた。
「そ、それは嫌です!」
「うん。なら、お願いするね。大丈夫。ぼくが一番に愛しているのは、きみだから。それだけは信じて」
イライジャが抱き締めると、クラリスは、はい、と嬉しそうに笑った。
──ああ。何て扱いやすく、便利な婚約者なのだろう。
イライジャはそっと、口角をあげた。
だが。
そんなイライジャの学園生活は、それから僅か二ヶ月後に、幕を閉じることになる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる