『完』婚約破棄されたのでお針子になりました。〜私が元婚約者だと気づかず求婚してくるクズ男は、裸の王子さまで十分ですわよね?〜

桐生桜月姫

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71 マリンソフィアの壊滅的なセンス

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 満面の笑みで仔猫ごと身体をくるくる回したマリンソフィアに、アルフレッドは嬉しそうに笑った。

「ちなみに、どういう基準でソフィーは名付けたんだ?ま、まあ、聞かなくとも分かるが………」
「真っ黒で綺麗なもっふもふの毛だから『クロ』、透き通った綺麗な琥珀色の瞳だから『琥珀アンバー』」
「………先代の猫の名前の候補は?」
「真っ白で綺麗なもっふもふの毛だから『シロ』と、サファイアみたいに綺麗な瞳だったから『蒼玉サファイア』」
「………分かった。色々と分かった。お前はもう、絶対に名付けはするな」

 アルフレッドは苦笑混じりに額を抑えて言った。

「うん、安心して。シロの名付け以来、わたくしはわたくしが考えて名付けを1度もしていないわ。孤児院から拾ってきた『名無し』の子たちのお名前も、全部クラリッサに考えてもらっているの。一応名付け親はわたくしってことになっているけれど、実際のところは、クラリッサが考えた候補の本の中から響きが気に入ったお名前をその子につけているって現状だから」

 マリンソフィアは慈善活動の一環で、1ヶ月に1~5人、孤児院から子供を引き取っては育ててを繰り返している。中でも見た目が良くて勉強熱心で優秀な子だけをそのままお店の従業員として育て、それ以外の子は将来の夢を聞いてそれになれるように手助けをしている。もちろん、優秀で良い見た目を持っている子供にも選択肢として『青薔薇服飾店ロサ アスール』で働くことを提示しているだけで、無理強いはしていない。マリンソフィアは、あくまで人材発掘のために子供たちを育てているのだ。
 そして、孤児院から引き取った子供たちの中には、当然ズボラな院長やシスターのせいで『名無し』と呼ばれる状態の子たちが存在している。経歴を調べ上げても、どのようにして捨てられたかや、どこに行かされていたかしか分からず、お名前のない子だ。

「………ちなみに、前回つけたヤツの名前は?」
「エレオノーラよ」
「………女か?」
「男の子よ!!『レオ』ってちゃんと男の子っぽい響きを入れているじゃない!!」

 ぷくぅーっと頬を膨らませたマリンソフィアに、アルフレッドはお名前を選択して名付けて尚それかと、盛大に突っ込みたくなってしまうのだった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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