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66 マリンソフィアの正体

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 マリンソフィアはクスッと笑ってアルフレッドに絶対零度の冷たい目を向ける。

「わたくしのことを知ってどうするつもり?アル」
「………僕には言うつもりはない、と」
「ふふふっ、さあ?どうかしらね?」

 マリンソフィアは、緊張感を高めたアルフレッドを見た後にくすくすと笑った。そして固く緊張した空気を霧散させるように淡く頬笑んだ。

「ふふふっ、あらあら冗談よ。それにしても、だいぶ怖がらせてしまったようね。大丈夫よ。わたくし、あなたになら教えてもいいかな~って思っているから」
「ーーー………………」

 無言で一気に息を飲んで緊張を高めたアルフレッドに、マリンソフィアは困ったように笑ったが、次の瞬間には、形容し難いくらいに綺麗で美しいの笑みを浮かべた。社交界の『賢姫』とまで呼ばれたマリンソフィアは、隠居してなお絶対女王としての風格があった。

「わたくし、本名は『マリンソフィア』って言うの」
「え………」
「マリンソフィア・グランハイム。この国の王太子の婚約者にしてグランハイム侯爵家の1人娘かしら」

 マリンソフィアの優雅で周りに大輪の青薔薇が咲き誇るような笑みに、アルフレッドは息を飲んだ。

「………そう、だったんだ………………」

 呆然としたアルフレッドに、マリンソフィアは満足気に頷き、そして探るような視線をアルフレッドに向けた。

「ふふふっ、流石のあなたも驚いたかしら?戸籍もない
「っ、」
「侯爵令嬢たるわたくしが、周辺の人間のことを調べないとでも思っていたの?わたくし、これでも用心深いのよ?従業員もクラリッサ以外は、身元と経歴をしっかりと調べ上げているわ」

 ぱらりと扇子のように書類を広げたマリンソフィアに、アルフレッドは若干引いて顔を引き攣らせる。

「………つまり、僕とクラリッサ以外は身元を調べ上げているっとことかい?」
「えぇ、そうなるわね」

 にこっと自信満々に答えたマリンソフィアに、アルフレッドはほうっと息を吐いた。

「………僕の素性は、………もう少ししたら絶対に明かす。だから、ーーー僕と結婚してくれないかな?」
「………へ?」

 マリンソフィアは、アルフレッドの人生最高の緊張を孕んだ求婚を、呆けた声と表情で一蹴した。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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