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58 王太子は期待に応える
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「あ、あぁ、とても、その………、す、素晴らしい布地だな。柄がとても美しい」
「まあ!!お分かりいただけますのね!!」
「あ、あぁ、まあな」
マリンソフィアは喜色満面の笑みを浮かべて嬉しいふりをする。
(わたくしは女優、わたくしは女優、わたくしは女優わたくしは女優わたくしは女優わたくしは女優ーーー………………)
必死になって頭の中で唱えながらも、マリンソフィアは追撃の手を緩めない。
「とっても素敵なきらきらと輝くグリーンで、ひと目見た時から、殿下のエメラルドのような瞳にとーっても似合うと思いましたの。やっぱり、殿下ならお分かりいただけると思っていましたわ!!ねえ、クラリッサ!!」
「………そうですね、殿下でなければ、この布の輝きはお分かりいただけなかったでしょう。近頃のお貴族さま方は、この布の良さを全く理解してくださいませんから」
「そうなのよね………、とっても残念だわ」
マリンソフィアは憂い顔でふむふむと頷いた。そして、ぱっと顔を上げてにこっと微笑んだ。
「王太子殿下、礼服はこれで仕立てても構いませんか?そうですねー、デザイン案はこれなんかいかがでしょうか」
今日の午前中に描き上げたデザイン案をどこからともなく取り出したマリンソフィアは、王太子にデザイン案を差し出した。王太子の好みのドストライクになるように描いているから、1発合格間違いなしだろう。こちとら、16年婚約者をやっていたのだ。好みくらい、手に取るように分かる。
「素敵だな!!これで任せる!!では、食事にでもーーー、」
「作業に行って参りますわー!!」
王太子からの不穏なお誘いを聞き切る前に、マリンソフィアは自分の作業室に逃げ込むように全力疾走で駆け上がった。これで、王太子は『裸の王子さま』をやることが実質的にほとんど決定した。マリンソフィアはそれで苦痛も全部飛び散るぐらいに満足だった。
「うふふふっ、せいぜい苦しめばいいわっ!!馬鹿王子!!」
マリンソフィアはひゃっほー!!というかのように踊りながら作業室に入ってそして、叫んだ。
どうやら、ストレスが限界を迎えてハイテンションになってしまってまったらしい。そんな主君を見たクラリッサは、苦笑しながらも、体調が戻った主君に安堵のため息をマリンソフィアの目の前で堂々とこぼすのだった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「まあ!!お分かりいただけますのね!!」
「あ、あぁ、まあな」
マリンソフィアは喜色満面の笑みを浮かべて嬉しいふりをする。
(わたくしは女優、わたくしは女優、わたくしは女優わたくしは女優わたくしは女優わたくしは女優ーーー………………)
必死になって頭の中で唱えながらも、マリンソフィアは追撃の手を緩めない。
「とっても素敵なきらきらと輝くグリーンで、ひと目見た時から、殿下のエメラルドのような瞳にとーっても似合うと思いましたの。やっぱり、殿下ならお分かりいただけると思っていましたわ!!ねえ、クラリッサ!!」
「………そうですね、殿下でなければ、この布の輝きはお分かりいただけなかったでしょう。近頃のお貴族さま方は、この布の良さを全く理解してくださいませんから」
「そうなのよね………、とっても残念だわ」
マリンソフィアは憂い顔でふむふむと頷いた。そして、ぱっと顔を上げてにこっと微笑んだ。
「王太子殿下、礼服はこれで仕立てても構いませんか?そうですねー、デザイン案はこれなんかいかがでしょうか」
今日の午前中に描き上げたデザイン案をどこからともなく取り出したマリンソフィアは、王太子にデザイン案を差し出した。王太子の好みのドストライクになるように描いているから、1発合格間違いなしだろう。こちとら、16年婚約者をやっていたのだ。好みくらい、手に取るように分かる。
「素敵だな!!これで任せる!!では、食事にでもーーー、」
「作業に行って参りますわー!!」
王太子からの不穏なお誘いを聞き切る前に、マリンソフィアは自分の作業室に逃げ込むように全力疾走で駆け上がった。これで、王太子は『裸の王子さま』をやることが実質的にほとんど決定した。マリンソフィアはそれで苦痛も全部飛び散るぐらいに満足だった。
「うふふふっ、せいぜい苦しめばいいわっ!!馬鹿王子!!」
マリンソフィアはひゃっほー!!というかのように踊りながら作業室に入ってそして、叫んだ。
どうやら、ストレスが限界を迎えてハイテンションになってしまってまったらしい。そんな主君を見たクラリッサは、苦笑しながらも、体調が戻った主君に安堵のため息をマリンソフィアの目の前で堂々とこぼすのだった。
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