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54 最悪の展開へ
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マリンソフィアの独白を知ってか知らずか、次の瞬間、胸元に大きな胸を擦り付けるように枝垂れかかっていた身体をベリっと剥がされたコロンが、王太子に向けて激昂した。怒声がうるさすぎる。ギャンギャン喚くなら、外でやってほしいものだ。
「あたくしを王太子妃にしてくれるって約束してくださったではありませんかっ!?」
「………ここ数日一緒に過ごして分かったのだが、お前は俺の地位にしか恋してないだろう。俺はそんな女と結婚するのなんかごめんだ。そして、俺はこの美しい女性に恋をした。手切金はこのくらいでどうだ?」
(あら、ちゃんと分かっていたのね。この女が王太子妃という立場に恋をしていたことに)
マリンソフィアは元婚約者を、ほんの少しだけ感心した瞳で見つめた。ここまで成長していたのかと思うと、ちょっとだけ感慨深いものがある。昔は変な詐欺商人にえげつない金額の不恰好な壺を買わされていたのに。
「っっっっっっ、王妃さまに言い付けましてよ!?」
「ふんっ、好きにするといい。母上は何があろうとも俺の味方だからな」
「………手切金の金額は最低でもその10倍にしてくださいませ。あたくしにも、体面というものがございましてよ」
「そういうのは、俺は苦手だ。母上に頼んでくれ」
王太子の言葉を受けたコロンは、きっとマリンソフィアを睨んだ後、颯爽と部屋から出ていった。うちの従業員に当たり散らしながら帰っているようだが、怖いもの知らずもいいところ。マリンソフィアはこれからの彼女に対する仕打ちを考えながら、じっと扉を扇子越しに睨みつけた。
「じゃあ、邪魔者が消えたことだし始めようか」
そう言われて分からないほど鈍感でないマリンソフィアは、扇子の下で口元をひくつかせた。普通、婚約破棄した相手に1週間も経たないうちに求婚するだろうか。否、普通の精神を持っていたらしないだろう。というか、普通16年も連れ添って来た婚約者ならば、装いやお化粧、髪型の変化ぐらいで相手が分からなくなるということすらないだろう。馬鹿王太子だとは思っていたが、ここまで馬鹿だとは思ってもみなかった。
(予想していた展開の中でも、最低最悪の展開ね)
マリンソフィアは渋い顔をしたいのを必死に我慢して、扇子の下で小さく吐息をつくのだった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「あたくしを王太子妃にしてくれるって約束してくださったではありませんかっ!?」
「………ここ数日一緒に過ごして分かったのだが、お前は俺の地位にしか恋してないだろう。俺はそんな女と結婚するのなんかごめんだ。そして、俺はこの美しい女性に恋をした。手切金はこのくらいでどうだ?」
(あら、ちゃんと分かっていたのね。この女が王太子妃という立場に恋をしていたことに)
マリンソフィアは元婚約者を、ほんの少しだけ感心した瞳で見つめた。ここまで成長していたのかと思うと、ちょっとだけ感慨深いものがある。昔は変な詐欺商人にえげつない金額の不恰好な壺を買わされていたのに。
「っっっっっっ、王妃さまに言い付けましてよ!?」
「ふんっ、好きにするといい。母上は何があろうとも俺の味方だからな」
「………手切金の金額は最低でもその10倍にしてくださいませ。あたくしにも、体面というものがございましてよ」
「そういうのは、俺は苦手だ。母上に頼んでくれ」
王太子の言葉を受けたコロンは、きっとマリンソフィアを睨んだ後、颯爽と部屋から出ていった。うちの従業員に当たり散らしながら帰っているようだが、怖いもの知らずもいいところ。マリンソフィアはこれからの彼女に対する仕打ちを考えながら、じっと扉を扇子越しに睨みつけた。
「じゃあ、邪魔者が消えたことだし始めようか」
そう言われて分からないほど鈍感でないマリンソフィアは、扇子の下で口元をひくつかせた。普通、婚約破棄した相手に1週間も経たないうちに求婚するだろうか。否、普通の精神を持っていたらしないだろう。というか、普通16年も連れ添って来た婚約者ならば、装いやお化粧、髪型の変化ぐらいで相手が分からなくなるということすらないだろう。馬鹿王太子だとは思っていたが、ここまで馬鹿だとは思ってもみなかった。
(予想していた展開の中でも、最低最悪の展開ね)
マリンソフィアは渋い顔をしたいのを必死に我慢して、扇子の下で小さく吐息をつくのだった。
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