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「お持ちいたしました」
「ありがとう」
クラリッサから王国で印刷されているすべての新聞を受け取ったマリンソフィアは、パラパラと全ての新聞に目を通した。新聞の1面はやっぱりマリンソフィアが予測した通り、マリンソフィアが侯爵家から勘当されたことや、婚約破棄されたことがメインで、中には嘘や出まかせしか書いていないものもある。
「あらあらまあまあ、わたくしが不倫だなんて失礼だこと。不倫をしたのは王太子殿下のほうでしょうに。まあ、王妃さまの計らいでしょうね。ま、このくらいすぐにどうにかできるけれど」
マリンソフィアは楽しそうに笑うと、紅茶を1杯飲み干し、クラリッサに新しくもう1杯入れてもらう。
「ほうぅー、ふふふっ、ここまで出まかせを書いてくださったんだもの。王妃さまにはちゃーんと、お礼をしなくちゃね。あぁでもその前に、この記事を書いた新聞記者にお手紙を書かなくっちゃ」
「………内容はいかがなさいますか?」
さっとメモ用紙と筆記用具を取り出したクラリッサは、手慣れた様子でマリンソフィアが次に言おうとする言葉を待った。
「“ソフィアーネ”でこう書いて出しておいて、『嘘しか書いていない新聞を出すなんてお馬鹿なことをしていると、いずれ後ろから刺されますよ。背後にはお気をつけくださいませ。あなたが長生きできることを祈って。ソフィアーネ』と」
「承知いたしました。王妃の件はいかがなさいますか?」
「そうねー………、王妃さまの国家予算の紙の写しを新聞社に送ろうかしら。だってアレは、質素倹約で民に寄り添うと言われている王妃さまのもらっていい金額じゃないもの。ついでに、浪費家と言われていた王太子妃の国家予算の紙を隣に並べておくといいかもしれないわね。王妃さまがくすんで見えるでしょうから」
マリンソフィアはくるくると人差し指を弄び、やがてどこからともなく国家予算の王妃と王太子妃の表を取り出した。
「さっき言った内容を、このお馬鹿な出まかせを書いた新聞社に送っておいて。あと、この紙を国家新聞局に“ソフィアーネ”の名前で通しておいて。この名前なら、簡単に通るはずだから」
貴族令嬢時代から行なっている、情報操作の際に使う名前を出しながら、マリンソフィアはご機嫌そうに笑う。
「さあて、今日の午後の分のお洋服を仕立てようかしら」
いくつもの顔を持っている少女は、作業室へと歩いていった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「ありがとう」
クラリッサから王国で印刷されているすべての新聞を受け取ったマリンソフィアは、パラパラと全ての新聞に目を通した。新聞の1面はやっぱりマリンソフィアが予測した通り、マリンソフィアが侯爵家から勘当されたことや、婚約破棄されたことがメインで、中には嘘や出まかせしか書いていないものもある。
「あらあらまあまあ、わたくしが不倫だなんて失礼だこと。不倫をしたのは王太子殿下のほうでしょうに。まあ、王妃さまの計らいでしょうね。ま、このくらいすぐにどうにかできるけれど」
マリンソフィアは楽しそうに笑うと、紅茶を1杯飲み干し、クラリッサに新しくもう1杯入れてもらう。
「ほうぅー、ふふふっ、ここまで出まかせを書いてくださったんだもの。王妃さまにはちゃーんと、お礼をしなくちゃね。あぁでもその前に、この記事を書いた新聞記者にお手紙を書かなくっちゃ」
「………内容はいかがなさいますか?」
さっとメモ用紙と筆記用具を取り出したクラリッサは、手慣れた様子でマリンソフィアが次に言おうとする言葉を待った。
「“ソフィアーネ”でこう書いて出しておいて、『嘘しか書いていない新聞を出すなんてお馬鹿なことをしていると、いずれ後ろから刺されますよ。背後にはお気をつけくださいませ。あなたが長生きできることを祈って。ソフィアーネ』と」
「承知いたしました。王妃の件はいかがなさいますか?」
「そうねー………、王妃さまの国家予算の紙の写しを新聞社に送ろうかしら。だってアレは、質素倹約で民に寄り添うと言われている王妃さまのもらっていい金額じゃないもの。ついでに、浪費家と言われていた王太子妃の国家予算の紙を隣に並べておくといいかもしれないわね。王妃さまがくすんで見えるでしょうから」
マリンソフィアはくるくると人差し指を弄び、やがてどこからともなく国家予算の王妃と王太子妃の表を取り出した。
「さっき言った内容を、このお馬鹿な出まかせを書いた新聞社に送っておいて。あと、この紙を国家新聞局に“ソフィアーネ”の名前で通しておいて。この名前なら、簡単に通るはずだから」
貴族令嬢時代から行なっている、情報操作の際に使う名前を出しながら、マリンソフィアはご機嫌そうに笑う。
「さあて、今日の午後の分のお洋服を仕立てようかしら」
いくつもの顔を持っている少女は、作業室へと歩いていった。
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