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43 マリンソフィアは眠る
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しばらくして泣き止んだマリンソフィアの顔は、とても酷い有様だった。
「もうっ、お化粧した顔で泣いちゃダメでしょう?」
「………クラリッサお姉さま、お顔拭いて」
出会った当時の呼び方で呼ばれて、クラリッサはつい、きゅんとしてしまう。今は甘やかすべきところではないと重々理解しているクラリッサは、ちょっとだけ突き放すような呆れた表情を作って、マリンソフィアの方を見る。
「子供じゃないんだから………」
「お姉さまはわたくしの侍女よ。お顔を整えるのもお仕事でしょう?」
「私は『秘書』です」
ぐすぐす言いながらも、首を傾げながら自分を侍女にすると宣言したマリンソフィアの耳は赤く染まっていた。何を恥ずかしがっているのかは分からないが、ものすごくレアだ。
「そんなの知らない。秘書も侍女も一緒よ。少なくとも、クラリッサは両方するんだから」
「それはそうだけれど………」
困ったように言うと、マリンソフィアは勝ち誇ったような表情をする。やっぱり、こういうところはまだまだ子供だ。
「あぁそうだ、後でちゃんと契約書を書き換えなくっちゃ。お給金を増やして、労働時間を変更して、………お部屋ももっと豪華にしないと、他の従業員に示しが、つかない、………わ」
マリンソフィアは色々と思考を巡らせながら、そのまま倒れるように眠ってしまった。クラリッサはそんな主人にびっくりしながらも、愛おしそうに主人の顔に濡れタオルを持ってきて崩れてしまったお化粧を拭き取った。
「本当に、世話のかかるご主人さまだこと。私1人でマリンちゃんのこと運べるかしら?」
懐かしい呼び方で彼女の顔を覗き込むと、彼女はむにゃむにゃとお返事をした。大変愛らしい。
クラリッサはマリンソフィアを軽々と抱き上げると、寝室へと運び込んだ。ベッドに優しく寝かせてあげると、ころころと転がって何かを掴もうとする仕草をしたあと、やがてクラリッサの制服の裾を掴んだ。
「おねえちゃま………」
「ーーー………」
可愛すぎるご主人さまを起こさないように、クラリッサはそっとマリンソフィアの身体を拭いて純白のネグリジェに着替えさせた。
「おやすみなさいませ、我が愛しのご主人さま」
額にキスを落としても、寝坊助で眠りの深いマリンソフィアが目覚めることはなかった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「もうっ、お化粧した顔で泣いちゃダメでしょう?」
「………クラリッサお姉さま、お顔拭いて」
出会った当時の呼び方で呼ばれて、クラリッサはつい、きゅんとしてしまう。今は甘やかすべきところではないと重々理解しているクラリッサは、ちょっとだけ突き放すような呆れた表情を作って、マリンソフィアの方を見る。
「子供じゃないんだから………」
「お姉さまはわたくしの侍女よ。お顔を整えるのもお仕事でしょう?」
「私は『秘書』です」
ぐすぐす言いながらも、首を傾げながら自分を侍女にすると宣言したマリンソフィアの耳は赤く染まっていた。何を恥ずかしがっているのかは分からないが、ものすごくレアだ。
「そんなの知らない。秘書も侍女も一緒よ。少なくとも、クラリッサは両方するんだから」
「それはそうだけれど………」
困ったように言うと、マリンソフィアは勝ち誇ったような表情をする。やっぱり、こういうところはまだまだ子供だ。
「あぁそうだ、後でちゃんと契約書を書き換えなくっちゃ。お給金を増やして、労働時間を変更して、………お部屋ももっと豪華にしないと、他の従業員に示しが、つかない、………わ」
マリンソフィアは色々と思考を巡らせながら、そのまま倒れるように眠ってしまった。クラリッサはそんな主人にびっくりしながらも、愛おしそうに主人の顔に濡れタオルを持ってきて崩れてしまったお化粧を拭き取った。
「本当に、世話のかかるご主人さまだこと。私1人でマリンちゃんのこと運べるかしら?」
懐かしい呼び方で彼女の顔を覗き込むと、彼女はむにゃむにゃとお返事をした。大変愛らしい。
クラリッサはマリンソフィアを軽々と抱き上げると、寝室へと運び込んだ。ベッドに優しく寝かせてあげると、ころころと転がって何かを掴もうとする仕草をしたあと、やがてクラリッサの制服の裾を掴んだ。
「おねえちゃま………」
「ーーー………」
可愛すぎるご主人さまを起こさないように、クラリッサはそっとマリンソフィアの身体を拭いて純白のネグリジェに着替えさせた。
「おやすみなさいませ、我が愛しのご主人さま」
額にキスを落としても、寝坊助で眠りの深いマリンソフィアが目覚めることはなかった。
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