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12 マリンソフィアは我慢してきた
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あたふたしているマリンソフィアを見てどう思ったのか、アルフレッドは不安そうにマリンソフィアの方に近づいてくる。
「だめ、だったかな?」
「ち、ちがっ、その………、………上手すぎて、びっくりしたの」
マリンソフィアは鏡の前でネックレスに気づかれなかったというか、ネックレスのことについて触れられなかったことに安堵しながら、綺麗に整えられた髪をするりと撫でた。
「ふうー、よかった。………前、妹の髪を整えてやってたら、母上に叱られてしまったんだ。『髪は高貴な女の何者にも変えられない命よ!!男が易々と触っていいものじゃないわ!!』って。ソフィアって良いとこのお嬢さんだろう?だから………」
「ふふふっ、気にする必要なんてないかしら。わたくし、今はもう高貴な人間じゃないから」
「そっか………、良かった」
マリンソフィアの言葉に、アルフレッドは心底安心したように息を吐いた。
「………アルフレッドってやっぱり良いとこのお坊っちゃまだったのね」
「ん?あ、あぁ、………まあな」
アルフレッドは歯切れ悪く頷く。マリンソフィアはくすくすと笑って髪をまとめる青いリボンを取り出した。
「髪、結って」
「は?」
「いいでしょう?切るついでに髪結ってよ」
「………いいけど、僕縛るのは下手だよ?」
「いいわよ。だってわたくし、もう表舞台に立つ気はないもの」
「?」
アルフレッドは渋々髪紐を受け取ってマリンソフィアの髪を緩くハーフアップにまとめ上げた。青い部屋着と同じ色のリボンがマリンソフィアの髪に映える。
「どう?似合う?」
「あぁ、似合うよ。いつものダサい緑色の服よりもずっとずっと似合う」
「そっか、………ありがとう、アルフレッド」
マリンソフィアは、元婚約者のせいで緑色の服以外を着ることが許されてはいなかった。王家の習慣として、王族の婚約者はパートナーの瞳の色の服以外を身につけられなかったのだ。よって、マリンソフィアは全く似合わない濃い緑色の服以外を身につけられなかったし、持つことができなかった。
だから、マリンソフィアは今、大好きな青色のお洋服を着ることができてとても嬉しかった。王侯貴族はなに不自由ない生活を送っていると勘違いされがちだが、マリンソフィアはずっとずーっと我慢してきた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「だめ、だったかな?」
「ち、ちがっ、その………、………上手すぎて、びっくりしたの」
マリンソフィアは鏡の前でネックレスに気づかれなかったというか、ネックレスのことについて触れられなかったことに安堵しながら、綺麗に整えられた髪をするりと撫でた。
「ふうー、よかった。………前、妹の髪を整えてやってたら、母上に叱られてしまったんだ。『髪は高貴な女の何者にも変えられない命よ!!男が易々と触っていいものじゃないわ!!』って。ソフィアって良いとこのお嬢さんだろう?だから………」
「ふふふっ、気にする必要なんてないかしら。わたくし、今はもう高貴な人間じゃないから」
「そっか………、良かった」
マリンソフィアの言葉に、アルフレッドは心底安心したように息を吐いた。
「………アルフレッドってやっぱり良いとこのお坊っちゃまだったのね」
「ん?あ、あぁ、………まあな」
アルフレッドは歯切れ悪く頷く。マリンソフィアはくすくすと笑って髪をまとめる青いリボンを取り出した。
「髪、結って」
「は?」
「いいでしょう?切るついでに髪結ってよ」
「………いいけど、僕縛るのは下手だよ?」
「いいわよ。だってわたくし、もう表舞台に立つ気はないもの」
「?」
アルフレッドは渋々髪紐を受け取ってマリンソフィアの髪を緩くハーフアップにまとめ上げた。青い部屋着と同じ色のリボンがマリンソフィアの髪に映える。
「どう?似合う?」
「あぁ、似合うよ。いつものダサい緑色の服よりもずっとずっと似合う」
「そっか、………ありがとう、アルフレッド」
マリンソフィアは、元婚約者のせいで緑色の服以外を着ることが許されてはいなかった。王家の習慣として、王族の婚約者はパートナーの瞳の色の服以外を身につけられなかったのだ。よって、マリンソフィアは全く似合わない濃い緑色の服以外を身につけられなかったし、持つことができなかった。
だから、マリンソフィアは今、大好きな青色のお洋服を着ることができてとても嬉しかった。王侯貴族はなに不自由ない生活を送っていると勘違いされがちだが、マリンソフィアはずっとずーっと我慢してきた。
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