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10 マリンソフィアの友愛
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幼馴染の彼は、最後にあった3年前に出会った時よりもずっとずっと美しくそして逞しくなっていた。
「綺麗になったね。ソフィア」
「………おっきくなったわね、アルフレッド。のっぽになりすぎて、わたくしがあなたを見上げるのが大変になったわ」
「じゃあ、これならどう?」
アルフレッドは迷いなくマリンソフィアの前に美しい所作で膝をついた。その姿はまるで、1枚の絵画のようで、騎士そのものだ。だが、マリンソフィアは気に入らない。
「………………」
「ふっ、不服そうな顔」
マリンソフィアはプイッと横を向く。
「………ここ3年、連絡すらくれなかったくせに」
「ごめん」
「………こっちはいっぱい心配した」
「そっか、嬉しいな」
「………ちょっとは反省したらどうなの?」
「ごめんね」
「軽い謝罪ね」
「………どうやったら、君を満足させられる?」
「さあ?土下座でもしてここでずーっとわたくしに許しを乞うたらどう?」
マリンソフィアはそう言うとクラリッサが持ってきた朝食を頬張り始めた。ふわっと広がる柔らかいパンの感触と甘い桃のジャムの味に目を細めたマリンソフィアは、次にクリーミーそうなコーンスープに口をつけた。優しい味が口いっぱいに広がり、あっという間に朝食のお皿が空になってしまう。
そして意識が朝食以外に向いた次の瞬間、真横で土下座をしているアルフレッドの姿が目に入った。できる女なクラリッサもいつの間にか消えている。
「!?」
「………………」
「………顔を上げたらどうなの?」
マリンソフィアの声を無視して、アルフレッドはずっと土下座し続ける。騎士さまのようだと思った次の瞬間にはこれだけ。マリンソフィアは困り果てて、アルフレッドのそばに膝をついた。
「顔を上げろと言っているの」
「………ゆるしてくれる?」
幼子のような問いかけに、マリンソフィアは困ったように微笑む。
「いいよ。許してあげる。だから、ーーー顔を上げて」
アルフレッドは、マリンソフィアの表情に嬉しそうに笑ってぎゅっとマリンソフィアに抱きついた。幼子のようにすりすりとマリンソフィアの方に額を当てて甘える彼は、マリンソフィアの知っている昔の彼そのものだ。
「大好きだよ、アルフレッド」
「ん、僕も」
優しい表情のマリンソフィアと泣きそうなアルフレッドは、友愛を交わし合った。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「綺麗になったね。ソフィア」
「………おっきくなったわね、アルフレッド。のっぽになりすぎて、わたくしがあなたを見上げるのが大変になったわ」
「じゃあ、これならどう?」
アルフレッドは迷いなくマリンソフィアの前に美しい所作で膝をついた。その姿はまるで、1枚の絵画のようで、騎士そのものだ。だが、マリンソフィアは気に入らない。
「………………」
「ふっ、不服そうな顔」
マリンソフィアはプイッと横を向く。
「………ここ3年、連絡すらくれなかったくせに」
「ごめん」
「………こっちはいっぱい心配した」
「そっか、嬉しいな」
「………ちょっとは反省したらどうなの?」
「ごめんね」
「軽い謝罪ね」
「………どうやったら、君を満足させられる?」
「さあ?土下座でもしてここでずーっとわたくしに許しを乞うたらどう?」
マリンソフィアはそう言うとクラリッサが持ってきた朝食を頬張り始めた。ふわっと広がる柔らかいパンの感触と甘い桃のジャムの味に目を細めたマリンソフィアは、次にクリーミーそうなコーンスープに口をつけた。優しい味が口いっぱいに広がり、あっという間に朝食のお皿が空になってしまう。
そして意識が朝食以外に向いた次の瞬間、真横で土下座をしているアルフレッドの姿が目に入った。できる女なクラリッサもいつの間にか消えている。
「!?」
「………………」
「………顔を上げたらどうなの?」
マリンソフィアの声を無視して、アルフレッドはずっと土下座し続ける。騎士さまのようだと思った次の瞬間にはこれだけ。マリンソフィアは困り果てて、アルフレッドのそばに膝をついた。
「顔を上げろと言っているの」
「………ゆるしてくれる?」
幼子のような問いかけに、マリンソフィアは困ったように微笑む。
「いいよ。許してあげる。だから、ーーー顔を上げて」
アルフレッドは、マリンソフィアの表情に嬉しそうに笑ってぎゅっとマリンソフィアに抱きついた。幼子のようにすりすりとマリンソフィアの方に額を当てて甘える彼は、マリンソフィアの知っている昔の彼そのものだ。
「大好きだよ、アルフレッド」
「ん、僕も」
優しい表情のマリンソフィアと泣きそうなアルフレッドは、友愛を交わし合った。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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