仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

94 双子の勝利

「婚約者だからといって、年端もいかぬおとめを怯えさ、あまつさえ許可なくふれようとするだなんて………！！」

　ぐすぐすと今度は目元に手を持っていったアイリスに、周囲の同情が集まる。

「婚約者をおびえさせるだなんて、この国ではそんなことがとーぜんなのですか？」

　周囲にいる文官や武官の男性方をアキレスが身振り手振りを加えながら見回すと、双子の周りの野次馬たちは総じて首を横に振っていた。
　オズワルドの結婚以降、この国では政略結婚よりも節度を持った恋愛結婚が主流になっていた。そしてそれに伴い、パートナーを大事にする人間が多くなっているがゆえに、今この場は明らかにアイリスとアキレスが優勢だった。

　この場は、情報収集を決して怠ることなく周囲の言葉に耳を寄せていたアキレスとアイリスによって完璧に掌握されていた。

　それは男に焦りというこの場で最も持ってはいけない感情を持たせ、状況の悪化を呼び寄せる。アキレスは男が怒りによってぶるぶると震え始めたのを密かにくちびるの端を上げながら見つめ、そして男が真っ赤な顔でアキレスを睨みつけた瞬間に、にんまりと彼にだけ分かるように嘲笑した。

「あ、う、………私生児ごときが、私生児ごときが俺のことを貶すな………！！」

　次の瞬間激情した男は、勢いよくアキレスに向けて殴りかかってきた。けれど、アキレスが一瞬だけ後ろに重心を移動したことによって、殴り損った男は床にべしゃっと落ちていった。

(………ねえ、アイリス。こいつあまりに馬鹿すぎてこの国の未来が心配なんだけど)
(………わたしはあまりの運動神経のなさに驚いているわ)

　こつこつと靴のつま先で床を叩いたアイリスが、うぇっと表情をわずかに歪めながらメアリーの方に1歩下がった。アキレスもアイリスに倣って1歩下がる。

(あーね。というか、こんな人が多いところで手を出す人間の気がわからないんだけど)
(そうね。そもそも、こいつは自分が何で転けたのか気づいているのかしら)
(無理でしょ。というか、この中で気づいているやついるのかな)
(いない方がわたしたちにとっては都合がいい気がするけれど？)

　挑戦的にアキレスを見つめたアイリスは、アキレスに挑戦的な笑みを返された。やっぱり双子。考えることは同じらしい。

(そうだね。手札は多い方がいい)
(でも、切れる手札はさっさと切った方がいい。でしょう？)
(よく分かってるじゃないか)

　双子は手を繋いで衛兵たちに取り押さえられて引きずられていく男を見下ろしながら、長い長いため息をついた。

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