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90 アキレスは守りたい
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「アキレス王子殿下は、」
「アキレス。王子と呼ばれるのは好きじゃない」
「………アキレス殿下はアイリス殿下のことが本当に好きなんすね」
ーーー………殿下も嫌なんだが………。
当然のことを聞かれ、そしてさらっと殿下呼びをされたアキレスは一瞬だけ不可解な感情と嫌々の感情をごちゃ混ぜにした表情をしたが、すぐに頷いた。
「あぁ」
ーーーだから、アイリスを傷つける人間は何人たりとも許さない。それが例え神であろうとも。
ふわっと微笑んだアキレスに、ハクレイは立ち上がりながら困ったものを見つめるような表情をした。アキレスには彼がそんな表情をした理由が全く分からない。
たった1人の家族を大事にして何が悪い。アキレスの家族は生まれてから死ぬまでアイリス1人だ。
「………ルーカス殿下も、お二方のこと大切に思ってるっすよ。だから、ーーー少しだけでも構いません。ちょっとは構ってやってほしいっす」
小さくて掃き捨ててしまっても分からないような願いは、けれど、アキレスには大きくて重たい願いだった。頷くかどうか悩んでぎゅっとアイリスの服の裾を握りしめた。嫌だとも即決できないけれど、良いよとも即決できない。どっちもどっちな場面だ。
「ぅんっ、」
「あ………」
「んー、………ふぁう………………。おはよぅ、アキレス」
「………おはよう、アイリス」
ぎゅっと服を握った拍子に、どうやらアイリスを起こしてしまったらしい。アキレスは少しだけ反省しながらアイリスの頭を撫でた。
寝ぼけ眼絵ゆるゆると瞳を擦る姿はとても愛らしい。無防備なアイリスの姿は、アキレスにだけ晒される特別なものだ。この無邪気で優しい妹の愛良を守りたくて閉じ込めたくて、汚いものから遠ざけたいのは、前世から何1つ変わっていない。
「はく、あれ?いない………」
「どーしたの?」
「いいや、何にもない」
心優しいアイリスににっこりと笑って、アキレスは彼女をぎゅぅっと抱きしめる。ぽかぽかとした体温に心がほかほかと温まる。
ーーー僕は、何があってもアイリスだけは助けてみせる。
前世から紡いでいる小さな小さな誓いは、長い長い時を得て大きな大きな呪いとなってしまっている事には、アキレスを含めて誰1人として気がついていないのだった。
*************************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「アキレス。王子と呼ばれるのは好きじゃない」
「………アキレス殿下はアイリス殿下のことが本当に好きなんすね」
ーーー………殿下も嫌なんだが………。
当然のことを聞かれ、そしてさらっと殿下呼びをされたアキレスは一瞬だけ不可解な感情と嫌々の感情をごちゃ混ぜにした表情をしたが、すぐに頷いた。
「あぁ」
ーーーだから、アイリスを傷つける人間は何人たりとも許さない。それが例え神であろうとも。
ふわっと微笑んだアキレスに、ハクレイは立ち上がりながら困ったものを見つめるような表情をした。アキレスには彼がそんな表情をした理由が全く分からない。
たった1人の家族を大事にして何が悪い。アキレスの家族は生まれてから死ぬまでアイリス1人だ。
「………ルーカス殿下も、お二方のこと大切に思ってるっすよ。だから、ーーー少しだけでも構いません。ちょっとは構ってやってほしいっす」
小さくて掃き捨ててしまっても分からないような願いは、けれど、アキレスには大きくて重たい願いだった。頷くかどうか悩んでぎゅっとアイリスの服の裾を握りしめた。嫌だとも即決できないけれど、良いよとも即決できない。どっちもどっちな場面だ。
「ぅんっ、」
「あ………」
「んー、………ふぁう………………。おはよぅ、アキレス」
「………おはよう、アイリス」
ぎゅっと服を握った拍子に、どうやらアイリスを起こしてしまったらしい。アキレスは少しだけ反省しながらアイリスの頭を撫でた。
寝ぼけ眼絵ゆるゆると瞳を擦る姿はとても愛らしい。無防備なアイリスの姿は、アキレスにだけ晒される特別なものだ。この無邪気で優しい妹の愛良を守りたくて閉じ込めたくて、汚いものから遠ざけたいのは、前世から何1つ変わっていない。
「はく、あれ?いない………」
「どーしたの?」
「いいや、何にもない」
心優しいアイリスににっこりと笑って、アキレスは彼女をぎゅぅっと抱きしめる。ぽかぽかとした体温に心がほかほかと温まる。
ーーー僕は、何があってもアイリスだけは助けてみせる。
前世から紡いでいる小さな小さな誓いは、長い長い時を得て大きな大きな呪いとなってしまっている事には、アキレスを含めて誰1人として気がついていないのだった。
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