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78,5 第1王子の選択
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▫︎◇▫︎
小さくてふわふわしていて愛らしい双子の新たな弟妹を部屋へと送り届けたエドワードは、その足で父たる国王オズワルドがいるであろう執務室へと向かっていた。向かう道すがら、たくさんのことが頭をよぎる。
中でも印象的なのはやっぱりアキレスの心の奥底からの叫びだろうか。
『親がこどもの面倒を見るのが義務?笑わせるな!!お前らが僕らを助けたことが今までに1度でもあったか!?なかったよなー!?』
世界の理不尽を全て知っているかのような、年不相応な達観した顔に年齢相応な舌っ足らずな滑舌。姉のアイリスを守るためならば全てをも投げ打つ、絶対的な覚悟。全てが自分よりも上だと感じた。あの頃の自分は何をしていただろうか。どんなふうに過ごしていただろうか。思い出せば出すほどに、自分の未熟さに反吐が出る。
帝王学が嫌だと、マナーが嫌だと、勉学が嫌だと、運動が嫌だと、何もかもをいやいやと投げ捨てて、泣き叫んで、弟たちが生まれて意思を持つようになるまでのエドワードは、全てを投げ捨てて嫌がって、泣きじゃくって、母親の胸の中で泣いていた。
ーーー強くならねば、
全てを守れるように。
全てに相応しくあれるように。
エドワードは拳を握り込んで執務室の扉を叩く。
これから行う行動は新しくできた愛らしく気高く、そして年齢不相応にならざるを得なかった、自分達が救えなかったせいで不幸になってしまった幼き弟妹たちの首を絞めることだ。
けれども、今この状況ではエドワードは彼らの自由を減らすということしかできない。
ーーーコンコン
ノックの音はまるで、アイリスとアキレスに迫り寄っている漆黒の影との時間の短さを物語っているかのようだ。
「父上、エドワードです」
「入れ」
「失礼いたします」
不器用な父親たるオズワルドは大量の書類と向き合っている。そのどれもが新たにできた弟妹のためのものであると、エドワードはちゃんと理解している。双子のために大量の泥を被り、身を粉にして働いている。回復魔法やポーションによって隠蔽されているが、彼はここ数日仮眠すらとっていない筈だ。
「双子について、お話がございます。先程、ーーーー………」
けれども、エドワードはこの状況でなおオズワルドの仕事を増やす。これは彼が背負うべきケジメであり、親としての使命だ。双子の脱走についての対処はしっかりとしてもらわなければならない。
エドワードは全てを話し終えてから頭痛に額を抑えているオズワルドに新たなポーションを手渡し、退出する。
ーーーどうか、父上の呪縛が早く解けることを祈って。
カツカツと軍靴の踵を鳴らして、齢15歳の王太子は前を見据えたのだった。
******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
小さくてふわふわしていて愛らしい双子の新たな弟妹を部屋へと送り届けたエドワードは、その足で父たる国王オズワルドがいるであろう執務室へと向かっていた。向かう道すがら、たくさんのことが頭をよぎる。
中でも印象的なのはやっぱりアキレスの心の奥底からの叫びだろうか。
『親がこどもの面倒を見るのが義務?笑わせるな!!お前らが僕らを助けたことが今までに1度でもあったか!?なかったよなー!?』
世界の理不尽を全て知っているかのような、年不相応な達観した顔に年齢相応な舌っ足らずな滑舌。姉のアイリスを守るためならば全てをも投げ打つ、絶対的な覚悟。全てが自分よりも上だと感じた。あの頃の自分は何をしていただろうか。どんなふうに過ごしていただろうか。思い出せば出すほどに、自分の未熟さに反吐が出る。
帝王学が嫌だと、マナーが嫌だと、勉学が嫌だと、運動が嫌だと、何もかもをいやいやと投げ捨てて、泣き叫んで、弟たちが生まれて意思を持つようになるまでのエドワードは、全てを投げ捨てて嫌がって、泣きじゃくって、母親の胸の中で泣いていた。
ーーー強くならねば、
全てを守れるように。
全てに相応しくあれるように。
エドワードは拳を握り込んで執務室の扉を叩く。
これから行う行動は新しくできた愛らしく気高く、そして年齢不相応にならざるを得なかった、自分達が救えなかったせいで不幸になってしまった幼き弟妹たちの首を絞めることだ。
けれども、今この状況ではエドワードは彼らの自由を減らすということしかできない。
ーーーコンコン
ノックの音はまるで、アイリスとアキレスに迫り寄っている漆黒の影との時間の短さを物語っているかのようだ。
「父上、エドワードです」
「入れ」
「失礼いたします」
不器用な父親たるオズワルドは大量の書類と向き合っている。そのどれもが新たにできた弟妹のためのものであると、エドワードはちゃんと理解している。双子のために大量の泥を被り、身を粉にして働いている。回復魔法やポーションによって隠蔽されているが、彼はここ数日仮眠すらとっていない筈だ。
「双子について、お話がございます。先程、ーーーー………」
けれども、エドワードはこの状況でなおオズワルドの仕事を増やす。これは彼が背負うべきケジメであり、親としての使命だ。双子の脱走についての対処はしっかりとしてもらわなければならない。
エドワードは全てを話し終えてから頭痛に額を抑えているオズワルドに新たなポーションを手渡し、退出する。
ーーーどうか、父上の呪縛が早く解けることを祈って。
カツカツと軍靴の踵を鳴らして、齢15歳の王太子は前を見据えたのだった。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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