60 / 101
53,5 (4) 従者の祈り
しおりを挟む
従者は紙の束をまとめながら、ふっと頭の中に書類の使い道が思い浮かぶ。
世の中に決して出ていってはいけない闇の報告書は、今日も国王によって裁かれるのであろう。この国は、優秀すぎる国王が自分の手駒たちを用意周到に扱い、裏も表も満遍なく完璧に治めていることによって、完璧でいて平和な状態を保っていた。
「………なんともまあエゲツないことだな」
それもこれも、優秀な手駒という名の可愛くて仕方がない息子たちの協力のおかげであるということを知っている従者は、無茶しかできない主人の額の汗を拭って、報告書を国王に届けに行く。
どかっと偉そうに椅子に座っている、否、実際に偉い金髪の髪を持ったこの国の頂に君臨する、絶対的な王たるこの国の国王たる男の机は、いつもに増して書類が積み上がっている。
「………ご苦労だった」
「………いえ」
書類を渡す際に見た、魂の抜けてしまったかのような国王のことを、従者はわずか1秒にも見ぬままに、忘れてしまうことを決意した。
(………何があったんだ!?あの男はいつも不遜で、偉そうで、自信満々なのが特徴なはずだろう!?ルーカス殿下と同じで、完璧主義者にして完璧な人間だったはずだろう!?いや、なんであんなに普通の人間っぽく落ち込んでいるわけ!?訳わかんないんだけど!?)
心の中で大きな叫び声を上げてわんわん叫んでいる従者は、どうしても訳がわからなくて頭を抱えてしまいたくなる。けれど、ルーカスの従者が故にそんな醜態を晒すことができない。彼は完璧主義者にして、合理主義者だ。変人を下には置いてくださらないだろう。
今の時点で怪物だの何だの色々なあだ名はつけられてしまっているが、そんなものはこの際どうでもいい。従者は自らが心酔してやまないルーカスから捨てられないために、必死になって職務に取り組む。1人で10人分以上の働きを軽くやって退ける彼のことを、ちょっとやそっとのことでは捨てないであろう、ルーカスの思考すらも読むことのできない彼は、明日のスケジュールを頭の中で組み立てながら、良すぎる目を使って未だに庭園でのんびりとしている双子に優しい視線を向けた。
「………幸せをお祈りしております、王国の新たな小さき太陽、双子の両殿下」
▫︎◇▫︎
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
世の中に決して出ていってはいけない闇の報告書は、今日も国王によって裁かれるのであろう。この国は、優秀すぎる国王が自分の手駒たちを用意周到に扱い、裏も表も満遍なく完璧に治めていることによって、完璧でいて平和な状態を保っていた。
「………なんともまあエゲツないことだな」
それもこれも、優秀な手駒という名の可愛くて仕方がない息子たちの協力のおかげであるということを知っている従者は、無茶しかできない主人の額の汗を拭って、報告書を国王に届けに行く。
どかっと偉そうに椅子に座っている、否、実際に偉い金髪の髪を持ったこの国の頂に君臨する、絶対的な王たるこの国の国王たる男の机は、いつもに増して書類が積み上がっている。
「………ご苦労だった」
「………いえ」
書類を渡す際に見た、魂の抜けてしまったかのような国王のことを、従者はわずか1秒にも見ぬままに、忘れてしまうことを決意した。
(………何があったんだ!?あの男はいつも不遜で、偉そうで、自信満々なのが特徴なはずだろう!?ルーカス殿下と同じで、完璧主義者にして完璧な人間だったはずだろう!?いや、なんであんなに普通の人間っぽく落ち込んでいるわけ!?訳わかんないんだけど!?)
心の中で大きな叫び声を上げてわんわん叫んでいる従者は、どうしても訳がわからなくて頭を抱えてしまいたくなる。けれど、ルーカスの従者が故にそんな醜態を晒すことができない。彼は完璧主義者にして、合理主義者だ。変人を下には置いてくださらないだろう。
今の時点で怪物だの何だの色々なあだ名はつけられてしまっているが、そんなものはこの際どうでもいい。従者は自らが心酔してやまないルーカスから捨てられないために、必死になって職務に取り組む。1人で10人分以上の働きを軽くやって退ける彼のことを、ちょっとやそっとのことでは捨てないであろう、ルーカスの思考すらも読むことのできない彼は、明日のスケジュールを頭の中で組み立てながら、良すぎる目を使って未だに庭園でのんびりとしている双子に優しい視線を向けた。
「………幸せをお祈りしております、王国の新たな小さき太陽、双子の両殿下」
▫︎◇▫︎
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
2
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!
織侍紗(@'ω'@)ん?
ファンタジー
ルーチェ村に住む少年アインス。幼い頃両親を亡くしたアインスは幼馴染の少女プラムやその家族たちと仲良く過ごしていた。そして今年で十二歳になるアインスはプラムと共に近くの町にある学園へと通うことになる。
そこではまず初めにこの世界に生きる全ての存在が持つ職位というものを調べるのだが、そこでアインスはこの世界に存在するはずのない無職であるということがわかる。またプラムは賢者だということがわかったため、王都の学園へと離れ離れになってしまう。
その夜、アインスは自身に前世があることを思い出す。アインスは前世で嫌な上司に手柄を奪われ、リストラされたあげく無職となって死んだところを、女神のノリと嫌がらせで無職にさせられた転生者だった。
そして妖精と呼ばれる存在より、自身のことを聞かされる。それは、無職と言うのはこの世界に存在しない職位の為、この世界がアインスに気づくことが出来ない。だから、転生者に対しての調整機構が働かない、という状況だった。
アインスは聞き流す程度でしか話を聞いていなかったが、その力は軽く天災級の魔法を繰り出し、時の流れが遅くなってしまうくらいの亜光速で動き回り、貴重な魔導具を呼吸をするように簡単に創り出すことが出来るほどであった。ただ、争いやその力の希少性が公になることを極端に嫌ったアインスは、そのチート過ぎる能力を全力にバレない方向に使うのである。
これはそんな彼が前世の知識と無職の圧倒的な力を使いながら、仲間たちとスローライフを楽しむ物語である。
以前、掲載していた作品をリメイクしての再掲載です。ちょっと書きたくなったのでちまちま書いていきます。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

最強九尾は異世界を満喫する。
ラキレスト
ファンタジー
光間天音は気づいたら真っ白な空間にいた。そして目の前には軽そうだけど非常に見た目のいい男の人がいた。
その男はアズフェールという世界を作った神様だった。神様から是非僕の使徒になって地上の管理者をしてくれとスカウトされた。
だけど、スカウトされたその理由は……。
「貴方の魂は僕と相性が最高にいいからです!!」
……そんな相性とか占いかよ!!
結局なんだかんだ神の使徒になることを受け入れて、九尾として生きることになってしまった女性の話。
※別名義でカクヨム様にも投稿しております。

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません
ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」
目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。
この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。
だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。
だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。
そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。
人気ランキング2位に載っていました。
hotランキング1位に載っていました。
ありがとうございます。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる