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23 とってもとっても可愛い子
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焦茶色の艶やかなストレートの髪に、前世でいうところの桃の花のような色彩の瞳。美人というよりは儚げで可愛らしい庇護欲を掻き立てるような女性だ。
ーーー彼女は父親にとって何なのだろうか?
アキレスは気配を消して周りの状況を確認する。
「エドワードもおかえりなさい。………エド、怪我はない?」
「はい、大丈夫です、母上。それよりも大丈夫なのですか?夜中まで起きていられてはお身体に………」
「問題ないわ」
エドワードが母上と呼んだ女性はおそらく王妃だと気がついたアキレスは、自分の方に視線がきた瞬間にすっと頭を下げた。アイリスがぐっと前に来てふらっとしてしまうが、ぎりぎり転けずに済んだ。
「貴方がアキレスくん?」
「はい、」
鈴を転がすような涼やかな女性の声には、一才の澱みがなかった。綺麗としか言いようのない返答は、うっとりしてしまうほどに美しい。アキレスは自分の澱んだ発音が途端に恥ずかしくなってしまった。アイリスがもしも起きていたならば、飛びつきながら教えをこいているところだろう。
「それでその可愛い子がアイリスちゃん?」
「はい、このとってもとっても可愛い子が姉のアイリスです。とっても可愛いでしょう?」
「えぇ、とっても可愛いわ」
女性はころころ笑いながら、アイリスの方を優しく見つめた。アキレスの視線も心なしかとても柔らかくなる。アイリスが最も大事なアキレスにアイリスを褒める言葉をかけるという行為は、アキレスの好感度を爆上げする最も簡単な手段だ。
「………部屋を用意させている。そこで休め」
「その部屋は僕とアイリスの同室ですか?」
「いや、違うが」
「同じにしてください。なんならベッドを移す必要もありません。僕たちは一緒にいられればどこでも満足ですので」
「分かった。お前とそっちの娘の部屋のどちらかを使え。本格的な部屋は2人で話し合って決めろ」
「ありがとうございます、国王陛下」
理性が戻ったアキレスは落ち着いて敬語を使い、父親と会話をした。本当ならば殴り込みたいところだが、ここでやってしまえば即刻不敬罪の牢獄行きだ。愛しのアイリスを置いていくことになってしまうそんなことは、アキレスには絶対にできない。アキレスはぴくぴくと痙攣する眉をそのままに必死の笑みを作って、深々と父親に向かって頭を下げた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
ーーー彼女は父親にとって何なのだろうか?
アキレスは気配を消して周りの状況を確認する。
「エドワードもおかえりなさい。………エド、怪我はない?」
「はい、大丈夫です、母上。それよりも大丈夫なのですか?夜中まで起きていられてはお身体に………」
「問題ないわ」
エドワードが母上と呼んだ女性はおそらく王妃だと気がついたアキレスは、自分の方に視線がきた瞬間にすっと頭を下げた。アイリスがぐっと前に来てふらっとしてしまうが、ぎりぎり転けずに済んだ。
「貴方がアキレスくん?」
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「それでその可愛い子がアイリスちゃん?」
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「えぇ、とっても可愛いわ」
女性はころころ笑いながら、アイリスの方を優しく見つめた。アキレスの視線も心なしかとても柔らかくなる。アイリスが最も大事なアキレスにアイリスを褒める言葉をかけるという行為は、アキレスの好感度を爆上げする最も簡単な手段だ。
「………部屋を用意させている。そこで休め」
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「いや、違うが」
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「分かった。お前とそっちの娘の部屋のどちらかを使え。本格的な部屋は2人で話し合って決めろ」
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