《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?

桐生桜月姫

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番外編

カリーナ夫人とシャロン叔母さま 12

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 アイーシャが幸せを噛み締めていると、2人の夫人が咳払いをする声が聞こえた。アイーシャはこてんと首を傾げながら、2人を見つめる。

「きょ、今日のところはこれで勘弁して差し上げることにするわ、カリーナ夫人」
「そ、そうね。これ以上は、火傷をしてしまいそうだもの。私も賛成よ、シャロン夫人」

 そそくさと扇子で顔を隠した2人を不思議に思いながらも、アイーシャはサイラスを見つめた。

「さ、サイラスさま、いかがでしょうか?」
「あぁ、ーーーよく似合っている」

 噛み締めるようにつぶやかれた言葉に、アイーシャは幸せそうに微笑んだ。口が緩むのを止められなくて、情けない表情をしている自覚があっても、アイーシャはついついサイラスを見つめ続けてしまう。

「サイラスさま、」
「アイーシャ、」

 顔と顔がどちらからともなく近づいていき………、

 ーーーパチン、

「いちゃいちゃなさって良いとは申しておりませんわよ?」
「えぇえぇ、流石にやりすぎかと存じますわ」
「チッ、」

 サイラスは2人の夫人を睨みつけた後、すっと立ち上がった。

「アイーシャ、行こう」
「え、あ、」
「うふふっ、お洋服の会計は済ませておくから、行ってきなさいな」

 アイーシャの心配に気がついたシャロンがふっと疲れたような笑みを浮かべながら言った。

「ご機嫌よう、アイーシャ」
「は、はい。ご機嫌よう、カリーナ夫人」

 サイラスに引きずられるようにしてエスコートされながら後ろを振り向いて、カリーナに挨拶をしたアイーシャは、サイラスと共に店を出る。

「あの2人は混ぜるな危険だな」
「………はい。今日1日で、嫌というほど実感しました」

 アイーシャとサイラスは疲れ切ったように息を吐いて苦笑する。そして、夕日を背にして目を瞑った。

 ーーーちゅっ、

 本日2度目の試みで成功したキスは、甘い味がした。

****************************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊
もう1件ご依頼のお話が入っているため、もう少し番外編は続きます。
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