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1人目のお客様 1
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カラン、コロン……
『あやかし書堂』にお客様の訪れを告げる鐘の音が鳴る。
今回の選ばれた特別なお客様は、腰まである長い美しい黒髪が特徴の高校生くらいの少女だった。招かれたお客様たる少女は不思議な書堂たる『あやかし書堂』を不安気に見回している。
かつんかつんとどこからか規則的で静かな下駄の足音が書堂に響いた。
「ようこそ、あやかし書堂へ。
ここは客のどんな願いをも願いを叶える書堂だ。
新たな客よ、お主の願いを言うが良い。我がそなたのどんな醜い願いをも叶えて信ぜよう。」
『あやかし書堂』の店主たる麗しの妖狐は、藤色の着流しを纏い、妖艶に微笑みながら現れた。光の当たり具合によって白にも銀にも金にも見える美しい毛並みに中性的な容姿、現世に存在するものとは到底思えない程に美しい。何より、大きな獣耳に尻尾が彼のものが現世のものではないことを物語っている。そして、彼のものが言った尊大とも横暴とも言えることを実行してしまいそうな、彼の前に立つだけで圧倒される妙な迫力らしき圧力もある。
現に、お客様たる少女は店主たる妖狐に圧倒され、ぱくぱくと口を開閉してしまっている。
「ん?」
だが、自分本意な妖狐はそんな少女のこともお構いなしに、少女が願いを口にすることを促すように妙に優しい声音で小首を傾げて少女の真意を探るようにじーっと見つめている。
「……どんな、どんな願いも貴方は叶えることができるの?」
やがて妖狐の圧に根負けした少女は覚悟を決めたように、まるで黒曜石のような色の凪いだ瞳を真っ直ぐと妖狐に向けて抑揚のない風のようなふわりとした声で尋ねた。
「あぁ、叶えられるとも。
我はこの願い叶える『あやかし書堂』の店主だからな。」
顎をくいっと前にだして答えた妖狐の態度は相変わらず尊大だ。
「……そう。」
抑揚のない声で答えた少女の気配や表情はそんな妖狐を相手に一切揺るがない。少女は覚悟を決めてしまったら、余程のことがないと動揺しないタチの人間らしい。まるでお人形のようだ。
「さて、そなたの願いは決まったか?」
妖狐は妖艶に微笑んで不思議なくらいに優しく尋ねた。
「……そうね、じゃあ死んだ生き物と話す力を頂戴。1度限りで構わないわ。」
少女は挑むような口調で真っ直ぐと答えた。少女はいつのまにか先程までのお人形めいた雰囲気ではなく、1人の生きている人間のような雰囲気になっていた。
*******************
読んでいただきありがとうございます♪♪♪
最後まで楽しんで読んでいただけると幸いです。
お気に入り数が10人を超えたら、2人目以降のお客様についてのお話しを書こうと思います。
不定期更新です。
『あやかし書堂』にお客様の訪れを告げる鐘の音が鳴る。
今回の選ばれた特別なお客様は、腰まである長い美しい黒髪が特徴の高校生くらいの少女だった。招かれたお客様たる少女は不思議な書堂たる『あやかし書堂』を不安気に見回している。
かつんかつんとどこからか規則的で静かな下駄の足音が書堂に響いた。
「ようこそ、あやかし書堂へ。
ここは客のどんな願いをも願いを叶える書堂だ。
新たな客よ、お主の願いを言うが良い。我がそなたのどんな醜い願いをも叶えて信ぜよう。」
『あやかし書堂』の店主たる麗しの妖狐は、藤色の着流しを纏い、妖艶に微笑みながら現れた。光の当たり具合によって白にも銀にも金にも見える美しい毛並みに中性的な容姿、現世に存在するものとは到底思えない程に美しい。何より、大きな獣耳に尻尾が彼のものが現世のものではないことを物語っている。そして、彼のものが言った尊大とも横暴とも言えることを実行してしまいそうな、彼の前に立つだけで圧倒される妙な迫力らしき圧力もある。
現に、お客様たる少女は店主たる妖狐に圧倒され、ぱくぱくと口を開閉してしまっている。
「ん?」
だが、自分本意な妖狐はそんな少女のこともお構いなしに、少女が願いを口にすることを促すように妙に優しい声音で小首を傾げて少女の真意を探るようにじーっと見つめている。
「……どんな、どんな願いも貴方は叶えることができるの?」
やがて妖狐の圧に根負けした少女は覚悟を決めたように、まるで黒曜石のような色の凪いだ瞳を真っ直ぐと妖狐に向けて抑揚のない風のようなふわりとした声で尋ねた。
「あぁ、叶えられるとも。
我はこの願い叶える『あやかし書堂』の店主だからな。」
顎をくいっと前にだして答えた妖狐の態度は相変わらず尊大だ。
「……そう。」
抑揚のない声で答えた少女の気配や表情はそんな妖狐を相手に一切揺るがない。少女は覚悟を決めてしまったら、余程のことがないと動揺しないタチの人間らしい。まるでお人形のようだ。
「さて、そなたの願いは決まったか?」
妖狐は妖艶に微笑んで不思議なくらいに優しく尋ねた。
「……そうね、じゃあ死んだ生き物と話す力を頂戴。1度限りで構わないわ。」
少女は挑むような口調で真っ直ぐと答えた。少女はいつのまにか先程までのお人形めいた雰囲気ではなく、1人の生きている人間のような雰囲気になっていた。
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