不思議の国のさくら〜永遠の親友〜

桐生桜月姫

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さくらと1番の親友

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「さくら」
「………………もかぁ」

 甘えて、泣いて、縋って。
 どのくらいの時間が経っただろうか。さくらはグスグスともかに抱きついて、そして意識が朦朧とし始めてしまっていた。

「もかとさくらはいつまでも親友だよ」
「………うん」
「でもね、もかには他にもいっぱい犬のお友だちがいるんだ」
「?」

 ごしごしと瞳を擦って、そしてぼやける視界の中でふわふわとした毛並みを見つめた。

「だからね、さくらもいっぱいお友だちを作って。でも、1番の親友はもかだからね?分かった」
「………分かった」

 ふっと瞳を閉じてぎゅっと彼女の毛皮に触れた。
 そして、さくらは意識を完璧に失った。

▫︎◇▫︎

 さくらは、いつの間にか眠ってしまっていた。もぞもぞと動くと、そこは誰かのお膝の上で、野花みたいに優しい匂いから自分が母親の膝を枕にしてソファーの上に寝ていることに気がつく。

「おはよう、さくら」
「おかあ、さん………」

 さっきまで抱いていたもかはどこかに消えてしまい、さくらの手は冷たくなっていた。

「あの、ね………」
「もかちゃんの夢をみたの?」

 打ち明けようか悩んでいたさくらよりも先に、母親がふんわりと笑って問いかけてきた。優しい彼女の視線の先には、さくらが握り込んでいる真っ赤なリボンがある。生前のもかが身につけていて、そしてお葬式の時にのものだった。

「!?」

 目をパチクリとさせてじっと手元のリボンを見つめる。真新しく見えるけれど、使い込まれた痕跡が残っているリボンは間違いなくもかのものだ。さくらは夢が現実であったことを理解して、赤く染まった頬を緩めた。

「もかがね、たくさんお友だちを作ってって言ったの」
「そう。じゃあ、お約束を守らないとね」
「うん!」

 手にリボンを握りしめて輝かんばかりの笑みを浮かべたさくらに、母親は彼女の未来が幸せに満ちていることを願った。

******************

最後まで読んでいただきありがとうございます😊😊😊
これにて完結になります!
さくらの未来が友だちいっぱいでありますように。

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