上 下
35 / 36

さくらは一緒にいたかった

しおりを挟む
 さくらの叫び声を受けたトランプたちは、いっせいに大空へと舞い上がってさくらともかに飛びかかった。

「きゃあああああぁぁぁぁ!!」

 さくらが驚いて悲鳴をあげると、次の瞬間、もかはさくらに覆いかぶさった。キャンキャンと甲高く吠えて、トランプたちに威嚇する。けれど次の瞬間、ぴたっともかの動きが止まった。そして、さくらにかかっていたトランプの重さがふわっと消え去った。
 さくらは何が起こったのか分からなかくて、恐る恐る顔を上げて周囲を見渡した。
 夢のようなきらきらとしたものが降りしきるそこは、さくらが初めてこの不思議な世界に迷い込んだ時に迷い込んだ場所だった。

「?」
「さーくらっ!」
「………どうしたの?もか」

 声を上げる彼女は、けれども先程までのしっかりと着飾ったような服装ではなくなって、四足歩行の元々の姿に戻っていた。首元に輝いているのは彼女が生前につけていた真っ赤なリボンの首輪。

「ねえ、どうして教えてくれなかったの?」
「………教えちゃったら、楽しい時間が終わっちゃうじゃない」
「そうだね。ここはさくらが来ちゃいけない場所だからね」
「………………」

 楽しい夢の終わりはやっぱり、『不思議の国アリス』同様にトランプに襲われてだった。それがどうにも悲しくて、寂しくて、さくらは嫌々と首を振る。わがままを言ったら変わるということではないとちゃんとわかっているでも、わがままをぐらい言わせてほしい。

「ずっと、ずっと一緒にいたいの」

 帰ってきた、否、久方ぶりに会う親友は、さくらの言葉に首を振った。

******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む

処理中です...