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さくらは正直

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 女王たちの前に罪状を多くの人に知らせる布告役の白いうさぎさんがやってきた。
 真っ白でころっとしたボディーにストライプのスーツがよく似合っている。真っ赤な蝶ネクタイもキューティクルだ。白いうさぎさんが裁判官役の王たちの前でトランプの滑稽な罪状を読み上げる。高らかな声は澄んでいて、罪状を判断する陪審員の動物たちに混じって裁判を見物しているさくらの耳にまでその声が届いてきていた。
 ざわざわがやがや、賑やかな声に掻き消されない声の出し方はあっぱれとしか言いようがない。

「ドッグフードケーキ食べたいね~」
「………私はチョコレートケーキかな」

 のびのびとした裁判を見つめる時間は長く続くと思っていた。しかし、さくらは自分ともかの身体が勝手に大きくなりはじめていることを感じる。
 裁判では、証人として帽子屋、公爵夫人の料理人が呼び出され、続いて3人目の証人としてさくらの名が呼ばれた。

(裁判で大切なのは間違った罪状で人が罰せられる冤罪を防ぎ、正しい犯人を見つけ出すこと。だから………、)
「何も知りません」
「はい?」

 進行役をしていたうさぎの言葉に誰しもが頷く中、さくらは正直な言葉を述べたのだ。

「よかった!これで冤罪が晴れる!!」

 にこやかなトランプの声に、さくらは少しだけ安堵した。しかし、女王たちは新たな証拠として提出された詩を検証して、それをジャックの有罪の証拠としてこじつける。
 さくらは、裁判の馬鹿げたやり方を非難しはじめた。冤罪はこの世にあってはいけないものだ。
 たくさんたくさん言い合った。
 さまざまなトランプからの嫌味が飛び交う。心をグサグサと抉るような言葉を何度も突きつけられて、さくらは目にいっぱい涙を溜め込んで叫んだ。

「あんたたちなんか、ただのトランプのくせにっ!」


******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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