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さくらともか

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 ぱりっと決まっていたかっこかわいいお洋服も、モフっとしていたはずの愛らしい毛も、大きくなったさくらのての中にいたもかはびっしゃんこになってしまった。しかも、びしゃびしゃになりすぎて、お洋服や毛から、ぽちゃんぽちゃんとお水が垂れてきてしまっている。
 けれど、さくらの目には、それよりももっともっと面白いものが目に写っていた。そう、びしゃんこになったことで、とてもスリムになったもかだ。

「ふふっ、あはははっ!!」
「笑わないで!!」

 ほっそりとした体つきがコンプレックスなのか、もかはぷんぷんと怒って恥ずかしがっている。

「昔、ご主人さまに笑われてから、好きじゃないの!!」
「ご主人さま?」
「そうよ。可愛らしくて………、あれれ?おもい、だせない………?」

 もかは不安そうに思案して、頭をうんうんと悩ませた。けれど、一向に思い出せそうにない。さくらはそんな様子を見つめて、もかが自分のことを忘れてしまっていることを実感した。

「私、さくらって言うの」
「?」
「自己紹介したいなって思っただけ」
「そっか!よろしくね、さくら」
「うん、よろしく」

 一抹の寂しさを感じさせないように、さくらはにこっと笑った。

 ーーーばしゃっ、

 唐突に、周りから水音が聞こえて、1人と1匹は、辺りをゆっくりと見回した。
 そこには、ネズミをはじめとして、色とりどりで華やかな鳥獣たちが泳いで集まってきていたのだ。さくらともかは、その美しい光景に、時間も忘れて見入ってしまった。

「きれい………、」
「そうだね、もか」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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