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さくらは落ちる

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「え………?」

 目の前には広がっている花畑は、ありえないくらいきらきらと七色に輝いていて、木にはたくさんのお菓子が実っている。他にも、大きな帽子型のお家や、空飛ぶ時計、雲は文字の形をしている。そして何より、いろいろなところに天使の羽が生えた動物が飛び回っている。
 さくらは、自分の目を疑った。さすさすと瞳を擦って、何度も目の前を見つめてみるが、世界はなんら変わってくれない。あまりの事態にほっぺたをつねってみるが、ほっぺはとても痛い目にあった。

「なん、なの?これっ、」

 さくらはあまりの事態に声を上げて、頭を抱えた。けれど、状態は何も変わってくれない。

「こんにちは、」
「きゃっ!!」

 パリッとしたスーツを着た真っ白なうさぎが、人の言葉を喋りながら話しかけてきた。さくらは、とても驚いて、ビクッと身体を揺らす。

「それじゃあご機嫌よう」

 挨拶もそこそこに何がやりたかったのかさっぱりと分からないままさっていこうとする真っ白なうさぎを追いかけて、さくらは白いうさぎの後を走る。
 けれど、唐突に足元が消えてしまってさくらは目を見開いた。そう。さくらはうさぎの穴に落ちてしまったのだ。

「びゃっ!?」

 さくらは、美しい絵画や、ぐちゃぐちゃに絵の具が塗りたくられた芸術的な絵画、その他にも独創的だったり、美しかったりする花瓶や壺、綺麗な背表紙の本などさまざまなものが飾られている、壁一面を覆い尽くすように置いてある棚を、うさぎの穴を長い長い時間をかけて落下しながら見る。

(きれい)

 恐怖よりも興味をもたらす空間に、さくらは感嘆のため息をこぼした。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
今日の更新分はここまでです!
明日からは余裕が有れば1日1話更新しようと思います。

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