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続編

64 お義母さまの可愛い

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 誰も返事はくれない。
 心の中で体育座りをして首を傾げると、周囲にいる小さな妖精さんのような小人たちが、こくこくと愛らしくふんわりと笑って頷いている。いつからかわたくしの夢の中に住み始めた、あいらしい、そしていとおしい住人。けれど、彼らはたまに恐ろしい行動をするから、わたくしは彼らから視線を外すことができなかった。本当に、なんで彼らはわたくしの夢の中に侵入してきているのだろうか。そもそも、彼らはわたくしの夢の世界への侵入者であっているのだろうか。
 わたくしがしみじみと考えていると、お義母さまの声が聞こえた。

『ディア、今日は新しいお花の株が手に入ったの。珍しい品種らしくて、商人さんもとても嬉しそうになって話していたわ。早くディアと一緒に観察したいわ。とっても可愛らしい花弁を持っているのよ』

 少しだけ空元気の度合いがアップしたお義母さまの声を聞きながら、わたくしはクスッと笑う。

(………お義母さまの可愛い当てにならない気がするわ………………。お義母さまってば、人喰い花の花弁を見て可愛いって言った前科があるもの。ちゃんと一緒に見に行ってから可愛いか、わたくしの目でどうか判断するわ)

 この前、お義母さまは、貧民街にいる人間の子供を噛み殺していた狂犬を、ばくっ!!と食べたといいうか丸呑みした人喰い花を見て、可愛いと評したのだ。よって、わたくしは最近お義母さま曰く『可愛い!!』というものはあまり信用しないようにしている。まあ、当然の反応だろう。お義母さまは狂犬を丸呑みする人喰い花を可愛いという人なのだから。
 どのくらい考え込んでいたかは分からないが、気がつけばメアリーがわたくしのそばにいた。

『………クラウディアお嬢さま、今日も私は王城に行ってきました。今日も今日とて、私の可愛い甥っ子はうざったくて、クラウディアお嬢さまにたくさんのお見舞いのお品を用意していたのですよ?本当に、クラウディアお嬢さまは愛されていますね。私、自分のご主人さまがこんなに美しくて、優しくて、非の打ち所がないご主人さまで、とっても鼻が高いんですよ?今日も、たくさんの人たちがクラウディアお嬢さまが早く元気になりますようにと、お祈りをしていたんです。王城では、みんながクラウディアお嬢さまが復帰して、その優れた頭脳から繰り出す聡明で的確な意見を待っていますよ』

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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