《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫

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続編

58,5 (6) 俺の懺悔

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「あら、ものはいいようですわね」

 エミリアの言葉に現実に戻された俺は、素直な感情を彼女にぶつけてみることにした。彼女ならば、俺に最適解という名の模範解答を教えてくれるような気がしたのだ。

「………そうだな。言い訳ばかりが頭に思い浮かんでくる。それ以外に、………言えることがないんだ」

 自嘲したかのような言葉は、悲しみに包まれている。俺はこんな声も出せたのかと呆然としてしまいながらも、もう言葉をしまうことなどできない。ぼろぼろと心の奥底にしまっていたはずの言葉が溢れ出始めて、もう自分の力では止めることができない。
 俺はぼろぼろになってしなっている、クラウディアのペンダコだらけの手を握りしめる手を強めて、武器を握った時にできたであろうタコを撫でながら、懺悔する。

「クラウディアのことを、もっとしっかりと見ておけばよかった。
 クラウディアのことを、もっと気にかけてやればよかった。
 クラウディアと、もっと早くに向き合っておけばよかった。
 クラウディアのことを、もっと理解してやればよかった。
 クラウディアのことを、もっと早くにクロエと別の人物と捉えればよかった」

 ーーークラウディアのことを、もっと甘やかしてやればよかった。

 いくら呟いても、懺悔しても、叫ぼうとも、クラウディアが目を覚ますことはない。久方ぶりに、否、初めてに近く声を荒げたとしても、周囲の様子が一変することはない。

「………はぁー、お医者さまはまだなのですか?メアリー」
「もう近づいてきています。あと20秒と言ったところでしょうか」

 戦闘メイドとしての技能を持ったメアリーは、躊躇いなく断言する。そしてちょうど20秒後、クラウディアの主治医が困ったような微笑みを浮かべてクラウディアのことを見つめながら、静かな声音で呟いた。

「しっかりと診察しないことには断言できませんが、おそらくただの疲労ですから、そんな死にそうな顔をしなくても大丈夫ですよ、皆さま。それどころか、今の皆さまの様子を見たらクラウディアお嬢さまが悲しむでしょうから、………というか、ここまで追い詰められている現状からして、自害されてもおかしくありませんから、絶対に、表情と顔色をどうにかしてください。いいですね?」

 俺はノロノロと頷いて、クラウディアの部屋から出て行く。

「………しっかりと休め、クラウディア」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

これにてお父さま視点終了です!!
次の話からはクラウディア視点へとちゃんと戻ります!!
気がつけばお父さまで6000字以上書いてましたね………。
久方ぶりのクラウディアちゃん、残念ながら、引き続きブラックです………。

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