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続編

40 礼儀作法について

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 わたくしの声に、ティアラローズさまは白目をむいて気を失ってしまった。なんと言うことだろうか、貴婦人たるもの、こんなことで気を失ってはいけないのに、最も簡単に気を失ってしまうとは、しっかりと教育し直す必要がありそうだ。
 そもそも彼女がこうなってしまったのは、娘に甘い隣国の国王夫妻の責任だ。赤子の頃から天才気質で、お勉強に関する知識が生まれつき考えられないほどに飛び抜けているがゆえに、それに特化した育て方を行い、それ以外の分野を全て無視してしまったことが原因だ。彼女にはなんの責任もない………とは言えないが、甘やかされすぎるのも良くない。わたくしぐらいはビシバシしなければならないのだ。
 彼女に必要なのは貴婦人としての品格に、淑女教育、そして美しい話術だ。ひとまず、今のような平民チックな喋り方は即刻矯正させなければならない。こう言うことは早めにしておくに限るのだ。善は急げというやつである。

「ディア、ティアラローズ殿下が目覚めたよ」
「あら、ありがとう、ライアン。今日は女子会を行うから、絶対にわたくしのお部屋へ来てはダメよ?もし、お約束を破ったら、即刻お父さまにご報告するわ」
「うげっ、」

 どうやらお父さまには頭が上がらないライアンに、わたくしは美しい微笑みを浮かべて釘を刺す。彼の苦々しい表情に、わたくしはちょっと嬉しくなる。彼はわたくしがいじめようとして行うことには平然としているのにも関わらず、わたくしが普通にしようとすることにはとても苦々しい表情をすることが多いのだ。わたくしは、ちょっとだけ、そう、ちょーっとだけ、それがとても気に入らない。どうせなら、わたくしの嫌がらせで苦々しお表情をしてわたくしの勝ちだと認めてほしい。彼には常々、辛酸を舐めさせられてきているのだから。
 わたくしはそっと溜め息をつくと、お義母さまとメアリーがいるわたくしの自室へと向かう。今日、2人にはわたくしと一緒に、ティアラローズさまの教育を行うようにお願いをしていたのだ。
 お義母さまは暗部の人間を輩出する家系の人間とあって、どこへでも潜入できるように礼儀作法がそこんじょそこらの王族では叶わないレベルだし、メアリーは元王女マーガレットにして、誘拐後はずっとお母さまの侍女をしていたことから、考えられないレベルに礼儀作法は完璧だ。

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