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続編
33 わたくしと侍女
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「私は、このままでいいの、ですか?クラウディア、お嬢さまに、お仕えしても、いいの、ですか?」
寝台に寝っ転がったまま痛みの走る額を抑えたメアリーが、弱々しい声で尋ねてくる。わたくしは、『えぇ、いいわよ。わたくし、あなたがいないとダメダメだもの』と言いたかったけれど、そうは言えなかった。
わたくしは公爵家の娘だ。
王家に支えるべき、公爵家の娘だ。
「………国王陛下のお言葉次第かしら?」
「じゃあ、おねだりしないとですね」
「えぇ、戻ってらっしゃい、メアリー」
ゆっくり抱きしめると、メアリーがヒックヒックと言いながら泣き出した。彼女の抱える荷物の重さは、わたくしには分からない。
けれど、彼女がいたい場所がわたくしの隣であるというのが嬉しかった。
「それじゃあ、わたくしは失礼するわね。………ーー一緒に帰りましょう、メアリー」
ーーーガチャン、
室内から嗚咽を漏らすメアリーの鳴き声が聞こえたが、わたくしは彼女の声を振り切って王太子殿下のお茶会へと向かった。
▫︎◇▫︎
そういえば、あれから国王陛下が我が家へよく手紙を送ってくるようになったのよね………。お父さまがいつも頭を抱えていて、ちょっとだけ可哀想だけれど、わたくしはわたくしの可愛くて信頼できる侍女を手放したくないから、仕方がないわ。
「それにしても、本当にお嬢さまはいじめの才能が開花しませんね。あんだけ本を読み漁ってさっこの程度とは、もはや頭痛を催すレベルです」
「………わたくしの侍女はお口が達者なようね。いいからちゃんと考えてちょうだい」
はあっと溜め息をついたメアリーは、一瞬考え込んだ後に、はあーっと言いながら呆れたように口を開いた。相変わらず、主人に対して不遜な態度以外を取らない侍女だ。
「お嬢さまの作るぶたちゃんのエサ………ごほん、美味しいお料理を提供なされたら良いのです」
「………今豚の餌と言わなかったかしら?」
「さあ?なんのことやら」
わたくしははあーっと溜め息をついた後に立ち上がり、料理の本を手に、わたくし専用にお父さまが作った厨房へと向かった。なぜなら、わたくしは初めて作った見た目が真っ黒々助で何故か原理は分からないけれど、爆発するケーキ以来、普通の厨房への入室が禁止されてしまったからだ。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
寝台に寝っ転がったまま痛みの走る額を抑えたメアリーが、弱々しい声で尋ねてくる。わたくしは、『えぇ、いいわよ。わたくし、あなたがいないとダメダメだもの』と言いたかったけれど、そうは言えなかった。
わたくしは公爵家の娘だ。
王家に支えるべき、公爵家の娘だ。
「………国王陛下のお言葉次第かしら?」
「じゃあ、おねだりしないとですね」
「えぇ、戻ってらっしゃい、メアリー」
ゆっくり抱きしめると、メアリーがヒックヒックと言いながら泣き出した。彼女の抱える荷物の重さは、わたくしには分からない。
けれど、彼女がいたい場所がわたくしの隣であるというのが嬉しかった。
「それじゃあ、わたくしは失礼するわね。………ーー一緒に帰りましょう、メアリー」
ーーーガチャン、
室内から嗚咽を漏らすメアリーの鳴き声が聞こえたが、わたくしは彼女の声を振り切って王太子殿下のお茶会へと向かった。
▫︎◇▫︎
そういえば、あれから国王陛下が我が家へよく手紙を送ってくるようになったのよね………。お父さまがいつも頭を抱えていて、ちょっとだけ可哀想だけれど、わたくしはわたくしの可愛くて信頼できる侍女を手放したくないから、仕方がないわ。
「それにしても、本当にお嬢さまはいじめの才能が開花しませんね。あんだけ本を読み漁ってさっこの程度とは、もはや頭痛を催すレベルです」
「………わたくしの侍女はお口が達者なようね。いいからちゃんと考えてちょうだい」
はあっと溜め息をついたメアリーは、一瞬考え込んだ後に、はあーっと言いながら呆れたように口を開いた。相変わらず、主人に対して不遜な態度以外を取らない侍女だ。
「お嬢さまの作るぶたちゃんのエサ………ごほん、美味しいお料理を提供なされたら良いのです」
「………今豚の餌と言わなかったかしら?」
「さあ?なんのことやら」
わたくしははあーっと溜め息をついた後に立ち上がり、料理の本を手に、わたくし専用にお父さまが作った厨房へと向かった。なぜなら、わたくしは初めて作った見た目が真っ黒々助で何故か原理は分からないけれど、爆発するケーキ以来、普通の厨房への入室が禁止されてしまったからだ。
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