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続編

19 わたくしは怒っている

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「じゃあ次の進言に行くわね。ティアラローズさま、ハンカチは何処にあるのかしら?」
「え、えーっとー、そのー、お、お家?」

 わたくしの背中には今炎の竜巻が吹き荒れて雷が鳴り響いている気がする。いや、普通に考えて当たり前だろう。何故王女ともあろう高貴なお方がハンカチすらも持っていないのだ。その前に、何故今もわたくしの制服ドレスのスカートでぐずぐず涙を拭いているのだ!!

「ティアラローズさま?ハンカチ・ティッシュをポケットに常備するというのは人間として当たり前だと、わたくしそう思っているの。ティアラローズさま、あなたさまは違うかしら?」
「………クラウディアさまが、衛生チェックカードを配る保健室の先生に見える………」

 ティアラローズさまはわたくしの質問に答えず、変なことを口走っている。怒っているというか、進言しているわたくしの目の前で現実逃避とはいい度胸ね。

「ティアラローズさま?聞いていらっしゃるの?」
「あ、ふぁい!!」
「うふふっ、よかったわー。もう1度同じ内容で叱るというか、叱る内容を追加せずに済んで」

 なおも『うふふふふーっ、』と笑っていると、ティアラローズさまが『ひいぃっ、』と情けのない悲鳴をあげる。せっかく人が進言してあげているのに、なんていう悲鳴をあげるのだ。失礼にも程がある。

「じゃあ、次の進言をするわね?」
「………………」

 ティアラローズさまの無言を肯定と受け取ったわたくしは、満面の微笑みをもってして話を続ける。

「ティアラローズさま、あなた今どこで鼻水と涙を拭いているのかしら?」
「ふぇ?」

 あ、これ気づいていないわね?
 わたくしは怒鳴りそうになるのを青筋を立てたまま笑顔で耐え抜き、ティアラローズさまに向けてハンカチを差し出す。水色のハンカチは新しくおろしたものだが、もう使えなくなってしまいそうだ。どうせなら、刺繍の練習用で使ったぐちゃぐちゃハンカチを持ってくるのだった。

「あ、ありがどうございまずっ、」

 鼻水をわたくしのハンカチでちーんとかんだティアラローズさまは、そのハンカチで顔の涙を拭く。………普通順番が逆じゃないかしら?鼻水ハンカチで顔って普通拭きたくないわよね?

「落ち着いたかしら?」
「は、はい」
「じゃあ、もう1度聞くわね。ハンカチを渡されるまで、あなたはどこで鼻水と涙を拭いていたのかしら?」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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