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50 第12の作戦決行!!

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「じゃあ、わたくしからの宿題。1ヶ月以内に全て理解して読み切って、1つでもいいから魔法を実現させてみて」

 これがわたくしが愛読書をライアンに譲ってまでしたかったいじめだ。
 題して、第12の作戦、『無茶振りをしてみよう!!』だ。このいじめに関しては結構な量のストックを蓄えている。夜な夜なベッドの中で悩み続けたのだから、自信もある。

「分かった。必ず成功させる」
「せいぜい頑張ることね」

 わたくしは真摯な瞳からすっと視線を逸らした。何故なら居心地が悪くなったからだ。だって、わたくしは絶対にできないことを言っているのだもの。彼は今まで最低限の教育しか受けていないのだから、わたくしが渡した本は魔法言語が難しすぎるのだ。
 できるはずがない。
 そう、絶対にできないはずだ。
 だから、大丈夫。
 わたくしはふぅっと息を吐き出してひらりとライアンの部屋から出た。顔が熱くて熱くて仕方がない。

「お嬢さま、いい加減素直になったらどうですか?」
「ーーー何を言っているのかしら、メアリー」

▫︎◇▫︎

 1ヶ月後、わたくしの想像と願いは見事にぶち壊されることとなった。

「ディア、来て来て!!俺、ちゃんとできるようになったんだ!ほら!!」
「分かったから、ちゃんと行くから。ちょっと待ってっ!!」
「あ、ごめん」

 息が切れ切になっておるわたくしを見たライアンは、慌てて歩くペースを戻してくれた。いつも冷静沈着な彼には珍しく、心が浮き足立ってしまっている。

「じゃあ、いくぞ!
 《全てを凍てつかせる氷の守護神よ、我願いを叶え、氷華に包まれし麗しの世界を作りたまえ、『クリエイト』》!!」

 彼の声に合わせて、魔法訓練場が氷の世界に包まれた。美しいキラキラとした氷柱の下がった華奢な氷の樹が現れ、たくさんの氷の薔薇と氷のすみれ、そして、模範的な形の美しい大粒の雪の結晶がちらちらと舞い散り、空にはありえないほどに鮮やかなオーロラが現れている。これはわたくしも使える魔法だ。確か教本の37ページから40ページまでに載っている。想像力に左右される魔法で、想像力が豊かなほど美しい幻想が浮かび上がる。つまり、わたくしよりもライアンの方が想像力豊かということだ。
 地味にムカつくし、癪に触る。
 わたくしは暫し、美しい空間を心ゆくまで楽しんだ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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