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48 わたくしはプレゼントする

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 カチ、カチ、カチカチ、カチカチカチ、カチカチカチカチ………………。

「なった!!」
「はい、では行きますか?」
「えぇ、」

 大きな振り子時計の前に張り付いてじっと下に付いている振り子の揺れる様子を眺めていたわたくしは、8時になった瞬間に顔を上げてメアリーに笑いかける。

 部屋に着くと、そこにはもうお義母さまもいらっしゃっていた。

「おはよう、ディア。それがライアンへのプレゼント?」
「えぇ、お義母さまは………」
「ふふふ、開けてからのお楽しみよ。あたなと同じで」
「むぅ、」

 わたくしはそう言いながらも、ライアンのお部屋に早く行きたいと思っていた。プレゼントをもらった時の彼の顔が早く見たくて仕方がないのだ。

「行きますよ」
「えぇ、お願い」

 コンコンコン!!

「ライアン、おはよう。クラウディアよ」
「………おはよう。入っていいよ」
「失礼するわ」

 気だるげな少しだけ女性に比べて低い声は、どんなに高価な楽器よりも圧倒的に美しくて、耳が勝手に彼の声を拾おうと躍起になる。

「お誕生日おめでとう、ライアン。これ、プレゼント」
「おはよう、ライアン。私からはこれを」

 ライアンは少しだけびっくりしたように目を瞬かせた後、嬉しそうにわたくしたちのプレゼントを受け取った。ワクワクと不安、相反するような感情によって、背中にじとりと嫌な汗が滲む。

 ガサゴソ、ガサガサ、ごそごそ、

「わあ!!」
「ど、どうかな?」

 出てきたのは、わたくしの瞳の色とライアンの髪の色をイメージして買った、バイカラーサファイアでできているカフスボタンだ。バイカラーサファイアはそこそこ希少価値が高いし、カフスボタンには雪の結晶と薔薇が折り重なるようなデザインにしていて,デザインだけ見れば、ネックレスと対になるようにしている。

「っ、ら、らいあん?」

 わたくしはびっくりそた。何故なら次の瞬間、ライアンの目からぽろりと1筋の涙がこぼれたのだ。

「や、ややや、やっぱり返して。ごめんなさい。嫌、だったわよね。わたくしなんかがごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 思わず声が震えてしまう。

「え?」

 手を伸ばして返してもらおうとすると、ライアンが必死に取られまいと抵抗を始めたのだ。

「嫌!これはもう俺のだ!!俺のお宝を取らないでくれっ!!」
「ふぇ?」

 わたくしの口から令嬢らしからぬ声が漏れたのは不可抗力だ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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