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30 わたくしは愚か

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「おぉ、さすがですな、お坊っちゃま。魔力制御がお上手だとはお噂を聞いていましたが、まさかここまでだとは思いもしませんでした」
「ありがとうございます。………義姉上の炎は暖かくて心がぽかぽかします」

 わたくしにはライアンの言葉が馬鹿にしているようにしか聞こえなかった。

「………何が言いたいわけ?そんなにわたくしを馬鹿にするのが楽しい?あぁ、楽しいわよね。だって、あんなに意地悪をされたわたくしがこんなにも愚かなんだもの」
「………………」

 わたくしはもう限界だった。次々と作戦が失敗に散り、唯一の最も成功確率の高い作戦さえもこんなに粉々に砕かれたのだから、当然の反応だろう。

「ねぇ、なんか言ったらどうなの!?ライアンっ!!」
「あ、義姉上」
「義姉上なんて呼ばないでっ!!あんたなんか1ヶ月しか変わらないのにっ!!わたくしはずっとずっと頑張ってきたのにっ!!大っ嫌いっ!!」
「っ、」
「………先生、今日は体調が優れないのでお暇させていただきます。宿題の方を後でお伝えください」

 わたくしは逃げるように走った。走って走って必死になって走って、自室にこもって鍵をかけた。こんな時にも、わたくしは笑うことしかできなかった。わたくしはライアンに向けて『大っ嫌いっ!!』と叫んだ時ですら笑っていた。

「あぁ、本当に、………わたくしはダメな子ね」

 ぽろぽろと泣きながら、わたくしは部屋の隅っこでただただ泣き続けた。夜に来る地獄の晩餐の時間が、憂鬱で憂鬱で仕方がなかった。

▫︎◇▫︎

「お嬢さまっ、開けてください。お嬢さま………!!」
「ん、、」

 床で丸まっている間に、気づけば当たりは真っ暗になっていて、メアリーの悲鳴が聞こえた。いつまでもうじうじしていてはいけない。そう思ったわたくしは、ふらふらとした熱に浮かされたような足取りで扉に向かい、鍵を開けた。

 ガチャリ!

 普段と変わらぬ音なはずの鍵を開ける音が、妙に頭に響き、頭痛がした。目の前がぼやぼやと歪んで見えるし、うまくまっすぐ歩けないし、床に丸まって眠ってしまった弊害に心の底から腹が立つ。

「お嬢さま!?な、お顔が真っ赤です。大丈夫ですか!?」
「大丈夫よ。………はぁ、晩餐に行かなければならないのよね?」
「そんな場合じゃございません!!」

 メアリーの耳をつん裂くような叫び声に、わたくしは意識を手放した。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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