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28 わたくしは不思議に思う

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 7日目、あの地獄の夕食開始から2日の日付が流れた。

「今日から先生がまた来るのよね?」
「はい、楽しみですか?」
「えぇ、第10の作戦を実行できるからね」

 第10の作戦、『魔法制御で馬鹿にしよう大作戦!!』、わたくしの得意分野だから、成功確率のとっても高い作戦だ。

「ふふふっ、魔法はとっても得意だし、先生の授業は面白いし、本当に楽しみだわ」
「お昼前からその調子では、お昼から授業で眠たくなってしまいますよ」
「そんなことないわよ」

 わたくしはスキップをしながら2日前に帰ってきた教本を手に取った。ライアンは聞いたところによると真紅の皮でできたカバーを選択したらしい。金箔が貼られているが、わたくしと全く同じデザインにしたというのも風の噂で聞いた。

「今日は昨日ぐっすり眠ることができたから、とっても気分がいいわ」
「悪夢にうなされなかったのですね」
「えぇ、最近は、というか4日前からそう。悪夢を見るたびに冷たくて心地良い手が明るい世界に導いてくれるの」
「お嬢さまが鍵を閉めてお部屋に篭られた日の次の日からですね」

 わたくしは思わずこてんと首を傾げた。だって、今までどんなに気を遣っても現れていた悪夢が、唐突に途中で止むようになったのだ。不思議に思わない方がおかしいだろう。

「………メアリー、あなた最近何かしてる?」
「いいえ、何も。というか、悪夢にうなされなくなったことすら存じ上げませんでした」

 わたくしはう~んと唸ったが、やがて無意味なことだと悟り、授業の予習を行うことにした。今日からはライアンとの合同になるから、今までの数倍力を入れないといけない。
 この国では男児が基本的に爵位を継ぐことになっている。養子とはいえライアンには十分に公爵家の次期跡取りとしての資格が存在している。だから、わたくしは彼との絶対的な能力の差を示して、分家筋に当主としての能力を認めてもらわなければならない。もしできなかったならば、わたくしは廃嫡で修道院行きになってしまう。もしもものすっごく運が良ければ、どこかに嫁ぐあたりだろう。

「………頑張らなくちゃ、頑張らなくちゃ、ちゃんと終わらせなくちゃ………………」

 わたくしはぶつぶつと呟きながら、難しい教本と数時間に渡って睨めっこをした。全てはわたくしが公爵家を継ぐために。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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