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22 図書館での学び

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「き、気に入ってくださって何よりです。め、メスも用意しましょうか?」
「お願いします!!」

 わたくしはきらきらとカブトムシを眺めている義弟ライアンを眺めたあと、席を立った。

「わたくしはこれにて失礼いたしますわ。ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」
「行くわよメアリー」

 わたくしはライアンの部屋を脱出し、図書館に向かって歩き始めた。色々な怪我の手当をするために学習しようかと思ったのだ。

「お嬢さまは何かしていないと死んでしまうのですか?」
「ワーカーホリックには言われたくない言葉ね。あなたこそわたくしのことを気にしていないと死んでしまうの?」
「死んでしまいますわ。だから、勝手にいなくならないでくださいね」
「………さあね。メアリー、勝手に死んだら許さないわよ」

 わたくしはライアンとお義母さまが来るまでいつもずっと図書館にこもっていた。だから、これはいつものことだ。だが、周りの人間はわたくしのことをびっくりした目で見ている。

「えっとお嬢さま、『鼻血の止血方法』が載っている本、ですか?」

 司書が異常なまでにびっくりしたような表情をした。昨日の『ライアン鼻血大事件』は結構広がっているらしいから、ライアンのことを気を遣って学ぼうとしていると勘違いされているらしい。
 ライアンを気遣うとか絶対に違うんだからねっ!?

「えぇ、そうよ。何かいいものある?」

 けれど、わたくしは一切それを表には出さない。
 だって変に訂正すると後々面倒臭くなるもの。

「これなんていかがでしょうか」
「えぇ、それで結構よ。感謝するわ。他にもいいものがあったら、いつもの席で読んでいるから本を持ってきてちょうだい。新作もね」

 わたくしはパチンとウインクして、いつもの窓際の席に向かった。庭園の花が見える特等席だ。

「………………幸せ」
「私は見える範囲にいますから、何かあればお呼びください」
「そうするわ。………わたくし、変?」
「弟君を理解しようとするのはいいことかと思います」
「そう………」

 わたくしはその後、無言で本を開いた。鼻血なんて経験したことがなかったから、本当に知らないことばかりだ。怪我の手当てなどを、勉強するのは初めてだから楽しくもある。

「お嬢さま、これも………」
「えぇ、ありがとう」

 司書が5冊の本を手に持っていた。見たことのない本だ。本当に、お勉強は楽しい。知らないことを知ることは楽しい。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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