《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫

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6 わたくしの好きなお花

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「お義母さまは薔薇と百合、水仙、鈴蘭、あと小花はどれが好きですか?」
「う~ん、私は小花が好きだけれど、ディアちゃんはどのお花が好きなの?」
「………赤薔薇ですわ」
「それは貴方の好きな花ではないわね」

 わたくしはぐっと言葉に詰まってしまった。やっぱりこの人は人のことをよく観察している。怖いくらいによく観察している。だって、わたくしの嘘を見破られたことなんて今までになかったから。

「わたくしの好きなお花は赤薔薇ですわ。だってわたくしにぴったりだもの」

 そう、赤薔薇はわたくしにぴったりなお花。だからわたくしの好きなお花。赤薔薇は我家紋、ローズバードの象徴でもある由緒正しき花だ。
 わたくしの好きなお花は赤薔薇以外にありえない。

「じゃあ、ディアのお勧めの薔薇庭園に向かいましょう。今からとっても楽しみだわ」
「ご期待に添えるかと存じますわ。だって、我が家の薔薇庭園は国王陛下に、ひいては王族御一行に献上するための由緒正しきものですもの。美しさは他の家に遅れをとりませんわ」

 わたくしは自慢げに言った。実際に我が家の薔薇は自慢の薔薇だ。今代国王陛下の奥方で王妃たる叔母さまが丹精込めて育てた代物だ。自慢でないわけがない。

「そう、それは楽しみですわ」
「………敬語、退けてくださって結構ですわよ。わたくしだけに退けないのは変ですから。お父さまともご相談ください。そちらの方がより親密に良い家族関係を築けているように見えるかと」
「ーーー分かったわ。貴方もいずれ退けてちょうだいね。私、楽しみにしているから」

 いい人すぎる継母に、わたくしは困惑してしまう。今彼女は、無理をしなくてもいいからね、という表情をしていた。彼女はわたくしの全てを見抜いてしまっている。
 心を許してはいけない。
 追い出さなくちゃいけないんだから。
 エミリアのように、死なせてしまう前に………。

「ディア?」
「ーーなんでもありませんわ、お義母さま。日が登りきってしまう前にお散歩に向かいましょう」

 わたくしは慣れた足つきでぼーっとしたまま自慢の庭園に向かい、ただただお義母さまの質問に魔道具のように微笑みの仮面を身につけたまま、模範解答を返し続けた。
 辞書、図鑑を開くかの如く、一言一句読み上げるかのように間違いなく正確に、そして、的確に………。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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