もふもふ好きのお姫様

白昼夢からの目覚め

▫︎◇▫︎

「っ、」

　口の中に広がった痛みの走る酸っぱさに、私はぶわっと現実を取り戻しました。まるで白昼夢を見ているかの如く、私は、私の意識は、あの時間にタイムトリップしてしまい、胃液が逆流してしまったようです。

「ははっ、情けないですね。こんなことでどうするというのです。私は、これから歴史に名を残すことになることを行うのでしょう？もっとちゃんとしなくては………。」

『シャル。大丈夫だよ。シャルならできるよっ！！』

　可愛くて仕方がなかった彼の声が耳元で響いた気がして、私は目をぱちぱちとさせました。

「えぇ、ありがとうございます、ケイ。」

　たった一言のお礼でも、私の中に温かな光が生まれて、私はもう少しだけ頑張れるような心地になりました。ずっとずっと見守っているけれど、一向に目覚めない彼女を見つめながら、私はぐっと決意を新たにします。

「………必ず目覚めさせます。どんな手を使っても。どんな茨の道を通ることになっても。………私は、決してあなたを見捨てはしません。」

　言い切ってから、私はくるっと彼女から踵を返して歩き始めました。

　ーーーカツン、カツン、

　ハイヒールの歩く音が、私の心の落ち着きを表すかのように、ゆったりと、そして規則正しく、リズムを踏み鳴らしました。

　ーーーギイィー、………ガチャンっ、

　不穏な音と、不穏な重苦しい気配が消え去った場所で、私は次の仕事の間に少しだけ休むために自分に部屋に向かうことを決意しました。

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