もふもふ好きのお姫様

お見送り方法

　言うや否や、彼女の水魔法が発動され、アインスお兄様の身体が水に包まれます。私はその様子を横目に眺めながら、窓を全開にして紅茶をこくっと一口。そして、カップをソーサーの上に戻した次の瞬間、アインスお兄様のお身体が魔法によって吹っ飛んでいきました。

「た～まや～。」

「………なんですか？それ。」

「これ？これはお母様の故郷で、打ち上げる物の追加を頼むときに使う言葉らしいですわ。“ハナビ”という物らしいです。」

　お空に咲く美しい火のお花であるとお母様はおっしゃっていましたが、アインスお兄様のお身体でも火のお花は代用できるでしょう。
　久方ぶりに思い出したお母様のお言葉を使いたい気分だった私は、ちょっとだけ間違った用法ですが、打ち上がったアインスお兄様を横目にお母様に習ったお言葉を使ってみました。

「さあ、今日は大忙しになりますよ、レム。アルお兄様を呼んできてください。」

「承知いたしました。」

　スッと消えたレムを見送った私は、ぐっと椅子の背もたれに身体を預け、両手で目元を覆います。そうしなければ、もう身体がバラバラになってしまいそうなほどに、私は疲れ切っていました。だって、今日で5徹目ですもの。ケイがいなくなっただけで、休むことさえもままならなくなるなんて、情けないったらありゃしませんね。

「………ケイ、私はあなたがいないとダメなのです。お願いだから、これ以上、私を１人にしないでください。」

　こぼれ落ちた弱音も涙も、誰も拭ってはくれません。だからこそ、私はもっともっと虚しくなってしまいました。

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